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2016.03.10 議会改革

第25回 定額支給の費用弁償は許されないのか

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回答へのアプローチ

 こうしたことを踏まえると、本会議などへの出席に当たっての費用弁償を条例で定めて支給することも、その額を定額とすることも問題がないように思われます。ただ、「日経グローカルNo.249」(2014年)によると、本会議などへの出席に当たっての費用弁償を廃止したり、廃止はしなくとも定額支給をやめる議会が増えているとのことです。2年前の調査に比べ廃止した議会は12議会、また、定額支給を行う議会も、2年前の調査より19議会減っています。
 平成2年の最高裁判決があるにもかかわらず、どうしてこのような動きが広がっているのでしょうか。判決は、決して定額支給を勧めているわけではありません。「いかなる事由を費用弁償の支給事由として定めるか、また、標準的な実費である一定の額をいくらとするかについては、(中略)議会の裁量判断にゆだねられている」と述べているだけです。裁判所としては議会の自律性を尊重しています。ですから、裁量の範囲に収まっている限りはとやかくいわないのです。それを超えたり、濫用があったときだけ、違法なものと判断するのです。
 もちろん、費用弁償の趣旨を大きく踏み外した定額支給は違法なものとなる可能性があります。また、裁量の範囲内であっても、住民の理解を得ることの必要性を否定したわけではありません。「委ねられたから……」といって議会が条例を自由に定められるわけではなく、委ねられたからこそ、議会は、費用弁償の趣旨を理解し、住民の理解を得られるものとしなければならないのです。
 「この際、少し余分にもらっておこう……」。そうしたあさましい気持ちは禁物です。住民監査請求を誘発し、議会への信頼を地に落とすことにもつながりかねないからです。平成2年の最高裁の判決がありながら、本会議などへの出席に当たっての費用弁償を廃止したり、定額支給をやめる議会が増えているのは、議会が自らを律している結果といってもいいでしょう。
 さて、回答案を見てみましょう。Cは明らかに誤りですし、Bも後段の部分が言い過ぎです。Aを回答としようと思います。

実務の輝き

 「歩いて15分さん」の議会は、都市郊外の人口10万人規模の市議会ということですね。もし、市内のある地域からは議会へ出かけるのが大変というようなことがあれば別ですが、普通に電車やバスが利用できるのであれば、費用弁償の額はその交通費が中心ということになります。また、「それなりの準備」のための費用も含まれているということですから、3,000円という額には、いわゆる「日当」が含まれているということなのでしょう。確かに、国家公務員等の旅費に関する法律などでも「日当」という文字は出てきます。交通費には含まれない食事代や雑費を指すもののようです。議員に当てはめてみると、本会議などの出席に際しての昼食代、お茶代、資料のコピー代、筆記用具代などが考えられます。ただ、会議の資料のコピーなら議会事務局にお願いすればいいことですし、筆記用具代は費用弁償するほどの額でもありません。「調査研究のために必要なんだ」との声もあるようですが、それは政務活動費の対象となるのでしょう。となると、日当の中心は昼食代ということになります。「いやしくも市民を代表する議員がその辺の定食屋さんなんかですますわけにはいかない」というかもしれませんが、その主張はなかなか住民に理解されないでしょう。国会議員だって、国会内のおそば屋さんや定食屋さんでさっとすませています。だいたい、昼食は本会議などに出席しようがしまいが食べるものです。となると、費用弁償すべきは、自宅で食べた場合との「差額」ということになります。ペットボトルのお茶なら庁舎の自動販売機で150円です。どう考えてもたいした額にはなりそうもありません。費用弁償を定額で支給する場合であっても、平均的な交通費からあまりにかけ離れた額では、市民に説明することはできません。

提言

 定額の費用弁償を導入する理由としては、支給手続の簡素化も挙げられます。確かに、議員数が多いと、一人ひとりの交通費を算出するのは面倒です。また、純粋な実費という場合には、「電車が遅れていたのでタクシーで駆けつけた」などといった場合の処理も問題となるところです。ただ、支給手続の簡素化を理由として費用弁償する場合にも、議員の住所から議会までの距離に応じていくつかに区分して支払う方法があります。

○福岡市特別職職員等の議員報酬,報酬,費用弁償及び期末手当に関する条例
第5条の2 議会の議長,副議長及び議員が定例会等(定例会,臨時会及び委員会(分科会,小委員会及び連合審査会を含む。)をいう。)に出席したとき(議会の議長及び副議長にあつては,市用の車を使用したときを除く。)は,費用弁償を支給する。
2 前項の費用弁償の額は,次の各号に掲げる議会の議長,副議長又は議員の住所から議事堂までの片道の路程の区分に応じ,当該各号に定める額とする。
 (1) 5キロメートル未満 日額1,000円
 (2) 5キロメートル以上10キロメートル未満 日額2,000円
 (3) 10キロメートル以上 日額3,000円
3・4 略

 「歩いて15分さん」の議会は10万人規模の議会ということですから、議員数は二十数人というところでしょうか。一人ひとりの交通費を調べて支給することにそれほどの手間はかからないことでしょう。それなら、定額支給せず、必要な交通費を実費で支払うことを検討してみてはいかがでしょうか。

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