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2016.03.10 議会改革

第25回 定額支給の費用弁償は許されないのか

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議会事務局実務研究会 吉田利宏

■お悩み(歩いて15分さん 70代市議会議員)
 大都市郊外の人口10万人規模の市の議員をしております。我が市では、本会議などへの出席に当たって定額の費用弁償を支給しています。一部の議員は報酬の二重取りだと批判します。しかし、条例を根拠とするものであり、しかも、1回3,000円という常識的な額です。いやしくも市民を代表する議員が登庁するのですから、それなりの準備も必要です。こうした定額の費用弁償を認めた判例もあると伺いました。批判する我が市の議員たちに「何の問題もない」とお墨付きを与えていただけますでしょうか。

回答案
A 定額支給を議会の裁量に委ねられたものとして違法としなかった判例がある。ただ、定額支給が必ずしも妥当ではない場合もあり、その支給方法や額について議会でよく議論すべきだ。
B 費用弁償の支給方法や額は議会の裁量に委ねられたものとする判例があり、条例さえ定めていればどんな形で支給しようが何ら問題がない。
C 定額の費用弁償を正面から認めた判例はなく、費用弁償である以上、実費以外の支給方法は認められていない。

お悩みへのアプローチ

 「条例で定めた額の費用弁償をもらって何が悪い!」。文面からはそんな気持ちが伝わってきます。もちろん、悪くはありません。しかし、いくら条例で定めたといっても「妥当ではない」ということはあります。「違法とまではいえないけれど、妥当ではない」。そんな費用弁償が存在します。そこが費用弁償の難しいところなのです。
 まず、費用弁償の根拠規定ですが、地方自治法203条2項に次のような規定があり、同条4項で支給方法や額は条例で定めるものとされています。

○地方自治法
第203条 略
② 普通地方公共団体の議会の議員は、職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。
③ 略
④ 議員報酬、費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。

 議員報酬は職務に対する対価です。ですから、職務を行うに際して必要となる費用は必ずしもカバーしていません。例えば、公務で出張したようなときには、その旅費や宿泊費を支給すべきです。どこの議会でも、こうした実費が費用弁償でカバーされています。ところが、議会によっては、本会議などに出席した際の交通費や日当を費用弁償として支給するところがあります。「歩いて15分さん」の議会もそうした議会なのでしょう。実際に必要となった額にかかわらず一定額を費用弁償する「定額支給」について、最高裁判所は次のように述べています。
 「右費用弁償については、あらかじめ費用弁償の支給事由を定め、それに該当するときには、実際に費消した額の多寡にかかわらず、標準的な実費である一定の額を支給することとする取扱いをすることも許されると解すべきであり、そして、この場合、いかなる事由を費用弁償の支給事由として定めるか、また、標準的な実費である一定の額をいくらとするかについては、費用弁償に関する条例を定める当該普通地方公共団体の議会の裁量判断にゆだねられていると解するのが相当である」(最判平成2年12月21日民集44巻9号1706頁)。

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