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2016.02.25 議会改革

『地方議会に関する研究会報告書』について(その8)

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執行部局所管課による支援

 議会の支援機能を強化するには、議事関係の議会特有の法規定・手続・先例・慣行・さらには突発事態の処理という案件を除けば、結局のところ、執行部局所管課の支援が受けられるかどうかが、決定的なのである。
 実際、国政では、各省庁官僚は、政治家に「ご説明」に足を運び、議員会館の間を「根回し」に走り回り、党本部の勉強会に出席する。もちろん、国会事務局にも、それぞれの調査室が強力に存在し、それなりの政策的な支援をしている。しかし、実際の政策・法案・予算の検討や立案に重要なのは、行政側の各省庁の所管課であり、その官僚なのである。国会議員は、官僚の支援を受けられる限りにおいて、機能を強化することは可能である。
 もちろん、このように、執行部局側の行政職員が議員を支援することには弊害もある。端的にいって、「族議員」化することである。つまり、官僚は国会議員を支援しているのではなく、むしろ国会議員を説得し、味方につけ、国会議員が官僚を支援するようにさせているともいえる。これは、支援ではなく、包摂・取込みといえるかもしれない。しかし、虎穴に入らずんば虎子を得ず、であって、官僚との接触なくして、国会議員が官僚に望ましい政策をさせることもできるはずはない。官僚と政治家の接触は、議員機能の支援のための充分条件ではない。議員機能がねじ曲げられる可能性もある。しかし、議員機能の支援のための必要条件ではあろう。
 さらに、国政レベルで各省庁官僚が支援するのは、もっぱら与党議員である。野党議員に全く支援をしないわけではないが、ほとんど形ばかりである。議院内閣制からいえば当然ともいえ、国会多数派を握る与党が国会の意思決定を左右するのであって、少数派の野党に説明する意味はない。また、議院内閣制の場合、内閣=与党が官僚制の「上司」に当たるわけであるから、与党議員への支援は、広い意味では「上司」に対する補助機関として当然となる。しかし、野党議員は、広い意味での「上司」ではない。したがって、与党議員を支援するとしても、国会議員又は国会の機能を、官僚は支援しているわけではないのである。
 二元代表制をとる自治体の場合、この点から微妙な問題をはらむ。自治体でも与党・野党的行動原理は存在するので、与党議員に対しては、執行部局の行政職員が支援をすることを強化する運用は充分に可能である。とはいえ、二元代表制の制度の影響はあり、与党議員といえども、広い意味では「上司」とはなり得ないので、執行部職員と自治体議員の距離は遠い。行政職員は首長の補助機関である。議院内閣制であれば、官僚の上司は大臣であり、大臣の上司は首相であり、首相を指名するのは与党議員であるから、与党議員への配慮は自然である。しかし、自治体では、与党議員が首長を指名するのではない。単に、議会で首長提案の議案を守ってくれる「友人」というだけである。したがって、執行部所管課が、自治体議員を支援するのは、国政レベルよりは期待薄であろう。
 しかし、このことは逆のメリットがある。国政では、与野党への支援の差別が生じやすい。それゆえに、国会への支援にはならない。しかし、自治体では与野党議員の差異は、あくまで流動的であり、案件ごとに変化することもあり、また、政局によっては、オール与党のこともあればオール野党のこともある。その意味で、議会として、いかに執行部行政職員に支援をさせるかに関しては、工夫の余地があろう。

【つづく】


(1) 『報告書』そのものに忠実に表現すると、「Ⅲ」とローマ数字が裸で記載されており、「第Ⅲ章」という表記ではない。しかし、本稿では、単に「Ⅰ」「Ⅱ」……では分かりにくいので、章立てとみなして、「第Ⅰ章」「第Ⅱ章」……と表記する。その下位項目は「1」「2」……であるが、「第1節」「第2節」と表記する。さらに、その下位項目は、(1)①となっている。
(2) 地方自治法138条5項では、地方公務員法上の「任命権者」ではなく、「任免権」と表記されている。しかし、他の職員についても、地方自治法では「任免権」と表記されており、特に、議会事務局職員に対する議長の人事上の裁量権が大きいわけではない。

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