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2016.01.25 議会運営

第45回 継続審査申出の件が本会議で否決された場合の取扱い/決算審議における監査委員の除斥の是非

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全国市議会議長会調査広報部参事 廣瀬和彦

継続審査申出の件が本会議で否決された場合の取扱い

Q請願が所管の常任委員会に付託されたが、付託委員会において継続審査とすることとなり、議長に継続審査申出の件が提出された。議長が定例会会期最終日の本会議において当該申出を日程に掲げ議会において審議した結果、否決となった。この場合における当該請願はどのように取り扱われるのか。

A継続審査とは地方自治法(以下「法」という)109条8項に基づき、委員会が議会の議決により付議された特定の事件について閉会中も引き続き審査することができる権限をいう。当該事件について付託された委員会は、継続審査が本会議において可決されれば原則として次の定例会の会期末まで引き続き審査することができる。

【法109条】
⑧ 委員会は、議会の議決により付議された特定の事件については、閉会中も、なお、これを審査することができる。

 継続審査の方法は、一般的には標準市議会会議規則(以下「市会議規則」という)111条により、委員会が付託された案件に対して閉会中もなお審査又は調査を継続する必要があると判断した場合に、委員会において継続審査の申出の議決を行った後、委員長から議長に継続審査の申出を提出し、本会議において当該申出を諮り、議決することとなる。

【市会議規則111条】
 委員会は、閉会中もなお審査又は調査を継続する必要があると認めるときは、その理由を附け、委員長から議長に申し出なければならない。

 なお、これ以外にも①委員会付託前であれば議長が案件を所管の常任委員会に付託するに当たり、議員が所定の要件を満たして本会議において継続審査の動議を提出し議決する方法、②委員会での審査終了後に本会議で当該案件が議題となった後に、当該案件に対して継続審査の上、再付託を求める動議を提出し議決する方法の2通りがある。
 ところで、継続審査は委員会が会期中に付託された案件に対して審査を行った結果、会期末近くにおいて継続審査とするかどうかの必要性が判明することが一般的である。
 そのため本問におけるように、会期最終日において委員会から提出された継続審査の申出の件を本会議において否決した後の取扱いが問題となる。
 本会議において委員会から提出された継続審査申出の件を否決するということは、本会議では委員会に付託した案件について当該会期中に、本問においては会期延長を議決しない限りは最終日中に当該案件に対する議決を委員会に対して行うことを要求しているといえる。
 確かに理論的には、継続審査の申出の件を本会議で議決後、本会議を休憩し、休憩中に当該請願に対して委員会で議決をすることが可能であるといえる。しかし、実務上は委員会が付託された請願を当該会期中に審査するには審査期間が不足しているとして継続審査の申出を行っていることから、委員会において直ちに当該請願を議決することは不可能である。
 それゆえ、実務上は、本会議において何ら手続をとらない場合、当該請願は、会期終了と同時に審議未了・廃案となってしまう。
 そこで本会議としては、付託した請願の委員会からの継続審査の申出を否決したのだから、当該請願に対する審議の責任を持つこととなり、それに対応する手続をとる必要がある。
 すなわち、本会議において委員会からの継続審査の申出を否決したなら、市会議規則44条1項に基づき議会が委員会に付託した事件の審査又は調査に必要があると認め、請願の審査に対し審査期限を付すこととなる。

【市会議規則44条】
① 議会は、必要があると認めるときは、委員会に付託した事件の審査又は調査につき期限を付けることができる。ただし、委員会は、期限の延期を議会に求めることができる。

 ここで審査期限は日を単位とするだけでなく時間を単位として付することができるため、例えば会期最終日の午後4時までとすることが可能であることに留意を要する。
  そしてこの期限が到来すれば、市会議規則44条2項に基づき、本会議において理論的には何らの手続をとることなく直ちに当該請願を議題に供し審議することができる。

【市会議規則44条】
② 前項の期限までに審査を終らなかったときは、その事件は、第38条(付託事件を議題とする時期)の規定にかかわらず、会議において審議することができる。

 しかし実務上は、議長が審査期限を付した請願を本会議において議題とし、直ちに審議していいかを諮り、議会において議決された後に当該請願を審議することとされている。  このように継続審査の申出の件を本会議で否決するということは、①会期終了と同時に案件が審議未了・廃案となる、②審査期限到来後に本会議において案件を直接審議する、③委員会で何とか案件に対する議決を行い、本会議で議決する、の3つの取扱いとなる。

決算審議における監査委員の除斥の是非

Q議会選出の監査委員が議会における決算審議において、法117条による除斥の対象となり、当該審議に参加することができないか。

A法117条における除斥の制度は、議員の立場が中立・公平性を強く求められる公職であることから、議員自身及び二親等以内の血族、配偶者の一身上に関する事件又はこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件に関しては、一般的に公正な判断を下しにくく、また公正な判断を下しても住民から誤解を招くおそれが高いことから、当該事件が議題に供されてから当該事件の表決が終了するまで、当該事件の審議に議員が参加することを禁止した制度である。

【法117条】(議長及び議員の除斥)
 普通地方公共団体の議会の議長及び議員は、自己若しくは父母、祖父母、配偶者、子、孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件又は自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件については、その議事に参与することができない。但し、議会の同意があつたときは、会議に出席し、発言することができる。

 さて、本問は議員が法196条1項に基づき議会選出の監査委員として、議員が所属する地方公共団体の決算について審査を行った後に、議員の立場として当該決算議案の審議に参加することができるかという問題である。
 つまり、決算議案に監査委員として関わりながら、議員として関わるのは中立・公平性を旨とする議員の立場から問題があるのではないかということであり、法117条の除斥の規定における一身上の事件に該当するのではないかということである。
 法117条における一身上の事件とは、除斥に該当すると思われる議員個人に直接的で具体的な利害関係を有する事件をいう。
 ここで議員が監査委員としての職務を行うことが議員個人に直接的で具体的な利害関係を有するかどうかであるが、行政実例(以下「行実」という)昭和30年11月10日のとおり、議会で監査報告が審議される際に、当該監査に関わった議会選出の監査委員である議員に対しては除斥の規定は適用されず、議員として審議に参加することができると解されている。

○監査委員の除斥(行実昭和30.11.10)
問1 監査委員中議員から選出された委員は、監査報告が審議される際は一般に除斥されることとなるか。
 2 もし一般に除斥されないとしても、右の監査委員による報告について不正監査の疑があり、それを議題として議会で審議する際には、右の委員は除斥されることとなるか。
答1 除斥されない。
 2 監査に際しての監査委員個人の不正行為を究明することを目的とする議題の審議については、お見込のとおり。

 なぜなら監査委員である議員が監査報告に関わるに当たっては、一般的に議員個人としての直接的・具体的な利害関係というよりは地方自治法に基づく監査委員としての職務に基づくものであり、その職務行使に当たっては中立・公平な観点から客観的にその職務が行われるものであると考えられるから、議員個人としての直接的・具体的な利害関係が発生しているとは考えられず、除斥の規定が働かないものと考えられる。
 この監査報告における議会選出監査委員の考え方を準用し、議会における決算審議に当たっても、議会選出監査委員である議員を除斥する必要はないと考えられる。

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