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2016.01.25 議会改革

『地方議会に関する研究会報告書』について(その7)

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之

はじめに

 これまで6回にわたり、総務省に設置された「地方議会に関する研究会」の最終報告書である『地方議会に関する研究会報告書』(以下『報告書』という)を検討した。前回は、議員に求められる役割・資質のうちの「専門性」を取り上げてみた。今回も、引き続いて、この『報告書』を検討してみよう。
 『報告書』の「第Ⅲ章(1) 地方議会の議員に求められる役割」「第1節 地方議会の議員に求められる役割・資質」は、代表性と専門性であるとまとめられている。その上で、報告書は「地方議会の議員の位置付け・役割の明確化」について論じている。今回は『報告書』に沿って、この点を論じておこう。

代表者としての法制規定の欠如

 『報告書』によれば、「議員の位置付けやその職責・職務を法制化すべきであるとの意見がある」という。その意見が具体的に何を指すのかは、『報告書』では必ずしも明示されていない。上記のとおり、『報告書』では、議員に求められる役割・資質は、代表性と専門性でまとめられているので、「代表者」(または「代表職」)と「専門職」で充分であると見ることができる。しかし、前回検討したように、必ずしも議員は専門職とは位置付けにくいところはある。その意味で、「代表者」という位置付けが最も自然であるといえよう。
 では、法制上、自治体議会の議員が「代表者」と位置付けられているかというと、必ずしもそのような明確な位置付けはない。地方自治法制で「代表」または「代表者」は、全く別のところにある。第1は、直接請求の「代表者」である(地方自治法74条1項以下)。これはあくまで、連署した住民の代表者であって、全住民の代表者という議員を指しているわけではない。第2は、議会の議長が議会を代表するというものである(地方自治法104条)。その変形として、議会または議会の処分などに関わる訴訟のときに、当該自治体を議長が代表するというものもある(地方自治法105条の2)。これらは、いずれも議長が議会または自治体という機関または団体・法人を代表するものであって、住民全体を代表するという意味ではない。
 第3に、首長が当該自治体を統轄代表するときの代表である(地方自治法147条)。しかし、これも、自治体という団体・法人を代表するものであって、全住民の代表者としての首長ではない。第4に、委員長が委員会を代表するというものもある(地方自治法187条2項など)。これらも、合議制機関またはそれに類するもの(2)の代表者を定めたものであって、全住民の代表者ではない。第4に、協議会(地方自治法252条の3第3項)や認可地縁団体(地方自治法260条の2第1項)などの組織の代表者である。
 つまり、『報告書』では、議員は代表者であるとしているにもかかわらず、法制上は全くそのような位置付けはされていない。地方自治法の「代表」または「代表者」とは、法人・団体・組織・機関の意思決定を具体的に担う「身体」としての、「代表」または「代表者」である。しかし、全住民または有権者団という領域社団または機関を「代表」する議員は、そのようには明確化されていない。議員と同様に、二元代表制の一翼を担う首長にしても、全住民または有権者団の代表ではなく、単に、法人としての地方公共団体の代表機関にすぎない。
 国会議員の場合には、憲法前文で、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、……その権力は国民の代表者がこれを行使し」とあるように、選挙された代表者が国会にいることが明確である。国会に選挙された者とは、衆議院議員・参議院議員であることは、憲法43条1項に「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」とあるから、明確である。このように見るならば、『報告書』に従う限り、「議員の位置付け・役割の明確化」とは、議員を全住民の代表者として地方自治法に明確に位置付けること、と意味していよう。

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