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2015.12.25 政策研究

第10回 老親の世話は誰がすべきか(国際比較)

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頼れる家族は誰か

 老親の世話で重要なのが家族であることはいうまでもない。それでは、配偶者は別にして、どの子どもに頼ったらよいのだろうか。この点については欧米まで含めた国際比較データは見つからないので、東アジアの4か国比較のデータを図2に掲げておいた。

図2 老親の世話の責任は誰にある(東アジア日韓台中比較)図2 老親の世話の責任は誰にある(東アジア日韓台中比較)

 全体的には、子ども全員で老親の世話の責任を持つという回答が6~7割と多い(韓国は例外だが)。
 日本の特徴は、次の3つである。①子ども全員が6割以上と最多、②韓国ほどではないが、長男を挙げる人が子ども全員以外では最も多い、③「子どもに責任はない」とする人が6.1%と他の3か国が1%程度以下であるのと対照的に多い。
 ①は戦後均分相続となった影響であろう。②は戦前の家制度の考え方の残存であろう。③については、社会保障が他の3か国より発達している点、また回答者に実際子どもに頼らず暮らす老親が多いこと自体によるものと考えられる。すなわち、回答した高齢者には、「子どもの世話になっていない」→「子どもに責任はない」、という意識連関が生じているのであろう。
 韓国の特徴は、何といっても長男を挙げるものが28.7%と他国と比較して格段に多い点にある。長男の役割を重く見るのが儒教的であるとするなら(中国の儒教では長男優先はないが)、儒教的な精神が東アジアの中でも最も色濃く残っている国といえよう。「子どもの誰か」という回答率が最も高いのも目立っているが、これは長男でなかったら長男に代わる誰かという意識の表れと思われる。
 台湾と中国は、日本、韓国と比較して長男の比率が低いのが特徴である。中国ではもともと親兄弟が一緒に暮らす合同家族を理想とし、兄弟間では財産は均分相続、祖先祭祀も兄弟全員の責務だという。「兄弟情如手足(兄弟の情は手足の如く)」といわれ、結婚後も兄弟の相互扶助が当然とされ、食事まで含めて老親の世話を、兄弟が共同で、あるいは順番で当たる伝統が受け継がれているといえよう。
 日本は長子相続が長い間支配的となったため、兄弟で助け合って老親の面倒を見るという伝統が築かれないまま、戦後改革で、女性まで含めた均分相続に一気に転換した。一方で、親の意識としては戦前の長男優先を残したままだった。このため兄弟姉妹の協力方式が確立せず、社会保障の充実でその必要性も低まったので、なお、タテマエとしての「子ども全員」に内実が伴わないまま推移していると考えられる。保守政党の考え方としては、子どもの役割を強め、また社会の絆を深める方向を志向するのであろうが、実際のところは、上述のように、家族、地域団体、行政との連携を図りながらも民間事業者のサービス内容の充実を図って介護保険制度を十分機能させていく方向が現実的なのではなかろうか。

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