2015.12.10 政策研究
【フォーカス!】民泊―新しい宿泊イメージか
国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。
民泊―新しい宿泊イメージか
中国を中心とした訪日外国人の急増もあって、東京、大阪、京都といったゴールデンルートを中心に、ホテル不足が顕在化している。「部屋が取れない」などの苦情も出ており、宿泊先の確保が、大きな課題となっている。
その中で注目されているのが、マンションの空き部屋や戸建て住宅に観光客らを有料で泊める「民泊」の活用だ。インターネットを通じた米国発の仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」などの発展もあって急増しており、ホテル、旅館以外の宿泊施設の在り方が焦点となっている。
国は規制緩和の観点から11月27日、厚生労働省と観光庁の有識者検討会がルール作りに乗り出した。2016年度内に結論を出すが、課題も多い。民泊といっても、繰り返して有料で泊めるとすれば旅館業法上の営業許可が基本は必要となる。
となると、それに合致させるためフロントや消火・誘導施設の整備が前提となる。これでは初期投資が多くなり、民泊を進める業者のメリットは少ない。テロのリスクを考えれば、宿泊者名簿の義務付けなど譲れない部分も多い。
一方、特例として、7日から10日までの連続宿泊であれば一定のルール化で民泊を認める特区制度ができている。これを受け、大阪府が7日以上の連泊を認める条例を制定、大阪市、東京都大田区も条例を策定する方針だ。
こちらは旅館業法の制度の外側。賃貸契約のイメージで、事業者が直接、寝具を提供するわけではない。なので、フロントの設備は必要ないが、宿泊者名簿への記入や対面での鍵の受け渡しが必要となる。旅館未満、ウィークリーマンション以上という位置付けだ。
ただ、大阪の民泊の場合、7日連泊を本当にチェックできるのか。マンションだと「隣近所からの苦情は」「ごみの処理は」など課題を挙げればきりがない。自治体側もそれ相応の体制の整備が不可欠となる。
結局のところ、大阪府が認定するのは、商業地域など交通の利便な地域にあって、トラブルが起きにくい賃貸マンションでの民泊となりそうだ。それでも防火・避難を中心に認定まである程度のコストはかかる。
となると、旅館業法の許可も取らず、民泊の認定も受けていない、〝もぐり〟の事業者だけがメリットを受けることになる。こういう事態を避けなければいけない。
訪日外国人を増やすには、宿泊の受け入れ能力を高める必要がある。ホテルの新規立地が王道だが、チャイナリスクやテロの可能性、日本の人口減少を考えれば、20年、30年先までこの状態が保障されるとは考えられない。事業者も二の足を踏んでいる。
稼働率の低い旅館の利用は一つの方策だが、3000万人の訪日客を視野に入れるとすれば、これだけでは足りない。結局は都市部の空き家を中心にどう宿泊施設として活用していくのか。そのための新しい仕組みをつくり出すことが確実な解決策となる。