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2015.11.25 議会改革

『地方議会に関する研究会報告書』について(その5)

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二元代表制論との関係

 人々を代表するのは議員であって、議会という機関ではないことも重要である。国会は、全国民の代表者である国会議員から構成される最高機関・唯一の立法機関である。地方議会は、全住民の代表者である地方議員から構成される議事機関である。しばしば、二元代表制論から、議会という機関が住民代表であるように考えられることはあるが、これは必ずしも妥当ではない。人を代表できるのは人だけである。全住民を代表できるのは、議員という人である。もちろん首長という人も、全住民を代表できる。しかし、首長という執行機関が、全住民を代表できるわけではない。
 ただ、二元代表制論の観点からすると、自治体では、首長がひとりで全住民を代表できることは、国との大きな違いである。国では、全国民から直接に選挙される「大統領」がいないので、国会議員そのものが全国民を代表しなければならない。しかし、自治体の場合、全住民を代表できる首長がいるから、あえて地方議員は全住民を代表しなくてもよいという考え方もあろう。つまり、住民の一定部分の代表者としての議員と、住民全体の代表者としての首長を対置させることも考えられる。
 実際、政治力学の行動原理からすれば、議員は選挙区や支持母体を重視し、首長は選挙区=自治体全域や平均的世論あるいは住民の多数派を重視せざるを得ないので、常識的にも理解しやすい。しかし、このように位置付けると、常に住民全体を代表する首長は、一部住民しか代表できない議員よりも、立場が強くなりがちである。したがって、二元代表制論に立つ限り、こうした位置付けは望ましいとはいえず、議員も全住民を代表するのが建前とすべきであろう。
 そもそも、自治体全域を選挙区とし、平均的な意見を持つ多数派住民を代弁するにすぎない首長が、全住民を代表するといっても、それは建前である。端的にいって、反対派あるいは少数派を、首長は代弁しないという政治力学が作用しがちである。その意味では、少数派・異端派を代弁しうる一部の議員を含めて、集団としての首長・個々の議員が全住民を代表しているのであろう。

選挙区の問題

 地方議会の議員も全住民の代表者という建前をとるにせよ、実際の選挙は選挙区ごとに行われる以上、政治力学からは、当該議員は自己の選挙区のみを代表していると行動しがちであろう。いわゆる「地域代表」という考え方である。ちなみに、国会議員においても、こうした「地域代表」という考え方は根強く、特に、衆議院議員は「地域代表」として理解されてきた。そして、長らく「郡市選挙区制」を採用し、また、それが緩んだとはいえ、市区町村を選挙区の基盤として、都道府県域を複数の選挙区に分割していると、都道府県議会議員では、こうした「地域代表」の観念は強い。こうした発想が「特例選挙区」の根底にある。
 これに対して、政令指定都市を除く市区町村は、原則として全域一区の超大選挙区制をとっている。総定員が30人規模となれば、膨大な数の候補者が現れるのであって、そもそも、誰をどのように選んでよいか分からないくらいである。ともかく、選挙区に分かれない以上、市区町村では「地域代表」という発想は制度上は生じにくく、全住民の代表と思いやすいかもしれない。
 しかし、現実的には、超大選挙区ということは、住民の中のごく一部の人から支持してもらえば当選できるということであって、「地域代表」という観念は生じにくいかもしれないが、単純に「全住民の代表」という発想になるかは、大いに疑問である。実際に、全域一区であっても、実際には地元・地盤というのがあったりする。特に、合併した市町村では旧町村が重要な意味を持つ。あるいは、特定の党派や業界の代表でもあったりする。したがって、単純に全域一区の市区町村議員が、全住民の代表者であると思われているとは限らない。

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