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2015.11.10 政策研究

【フォーカス!】見えないTPPの影響

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国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。

見えないTPPの影響

 
 日中韓首脳会談が3年半ぶりに開かれた要因に、環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意に対する中国、韓国の焦りがあることが指摘されている。世界の4割の国内総生産(GDP)を占める巨大経済圏が誕生するからだ。乗り遅れまいと中韓が動くのはうなずける。外交カードとしては一定の効果があったようだ。
 ただ、10月に大筋合意されたTPPが国内にどのような影響を及ぼすのか。いつごろ発効するのか、その見通しが立たない。
 国内対策では、農林水産省が40品目を分析、牛肉、豚肉、乳製品の3品目が「長期的に関税引き下げの影響懸念」と価格下落の可能性があるとした。コメや小麦、大麦は「国家貿易以外の輸入増大は見込みがたい」として国内対策によって影響はコントロールできるとの立場、残りは「影響は限定的」などとした。直後には、野菜と果物21品目を対象に同様の分析結果を出している。
 農水省、自民党農林部会(小泉進次郎会長)は各地で説明会、意見交換会を開いている。自民党は11月20日に提言をまとめ、補正予算に対策を盛り込み農家の理解を得るというシナリオを描いているが、そう簡単ではない。
 まず、①TPP交渉が秘密裏に行われたため全体像に対する国民理解が進んでいない、②農林水産業だけでなくサービス貿易、製品輸出など日本経済全体への影響の評価ができていない、③中山間など条件不利地域への影響が大きくなると見られ、地方創生といった現在の政策との矛盾が今後表面化する―などが挙げられる。
 コメの部分開放などを決定した1993年の関税貿易一般協定(ガット)ウルグアイ・ラウンド合意を受け、8年間で計約6兆円の対策が行われた。しかし、農家の競争力強化につながらなかったことから、農政に対する信頼感も乏しい。
 農業の将来像を描けないまま小手先の対策を進めても無理だろう。高齢化する農家の後継者をどうするのか、企業による経営と中核農家、兼業農家とのバランスをどうするのか、条件不利地域の支援を進めるのかなど根本的な議論がなければ、TPP対策は描けまい。 このままでは、施設整備や農業土木に主眼が置かれたガット・ウルグアイ対策の二の舞いになる恐れがある。
 国際的には、発効の要件から米国か日本のいずれかが批准しなければTPPはスタートしない。両国が拒否権を持っていると言える。米国はオバマ大統領が署名の意思を示し、議会承認の手続きが始まった。来年2月以降に署名が終わりTPPに関して各国が最終合意する見通しだ。
 その後、米国も含め批准の手続きに入る。米議会では与野党ともTPPに懐疑的な意見も多く、批准に対する承認がいつ得られるかは見えない。
 一方、日本政府は臨時国会の召集を見送り、閉会中審査を行うが、TPPに関する本格的な論戦、批准は来年の通常国会となる。成長戦略と位置付け早期の批准を目指す方針だが、現実的には米国の動きを見ながらの作業になる。

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