地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2015.10.26 議会改革

揺れる議員報酬のあり方

LINEで送る

日額制の見直し

 産経ニュース(「全国唯一の議員報酬『日当制』福島県矢祭町議会で賛否真っ二つ」2015年3月23日)によれば、「日当制」を見直し、月額制に戻すかどうか、3月19日に見直しを検討する特別委員会が初めて開催されたが議論は平行線をたどったという。日額制に対して、一部議員から「経済的に余裕がなければ議員活動を続けるのは難しい。若い人もなりにくい」などの不満の声が上がっていたという。しかし、菊池清文議長は「審査すべき議案も少なく、月20万円の対価をもらうほどの仕事をしているとは正直いえない」とし、「人件費など固定費を除けば、町の予算は25億円くらい。議員報酬を増やすぐらいなら、福祉などにもっとお金を使うべきだ」と意義を強調しているという。
 一方、月額化を主張する鈴木敏男副議長によると、議案の調査日数が足りず会期を延長した際、「そんなに3万円が欲しいのか」と一部町民から揶揄(やゆ)されたこともあったという。「日額派」と「月額派」の町議は現在5人ずつで勢力は拮抗(きっこう)しているという。
 この問題は、2016年の春の町議選の争点になる可能性もある。役場で最も忙しい課長職の給与が日換算で約4万5,000円だったため、議員の報酬(日額)をそれより低い水準にしたという、その根拠が妥当であるかどうかが問われてしかるべきである。自治法は、議会の議員に対し「議員報酬を支給しなければならない」と報酬支給を義務付けている。その義務の果たし方については自治体に裁量権があるが、勤務の限定された非常勤職であるとみなす議員観に立って報酬を考えてよいかどうかが問題なのである。

みなかみ町の場合――大幅引上げ・10%カット

 『議員NAVI Vol.44』(2014年)の「⑯ 市町村議選と無投票・欠員問題」で「議員報酬を引き上げた群馬県みなかみ町の場合」を紹介したことがある。みなかみ町では、2013年12月の町議会で、月額19万円の議員報酬を42%増額して27万円とする条例改正案を賛成多数で可決した。2014年4月の町議選を控え、議員のなり手の確保を狙ったものといわれた。町長は「他町村と比べて極めて低い」として町特別職報酬等審議会に30万円とする案を諮問し、審議会答申の23万円を上回る27万円を議会に提案していた。町長は提案理由説明で「全国的に議員に立候補する住民が少なくなった。いろいろな人が町づくりに関わる環境整備を図ることが必須」と述べている。
 合併前の3町村ごとの選挙区が廃止され、定数を18人にした2006年には29人が立ち、2010年には22人が立ち、2014年4月20日の町議選には21人が立っている。立候補者の減少は見られない。しかし、今後、報酬の引上げが必ず効いてくると考えられている。
 ところが、朝日新聞の全国自治体議会アンケートのうち、群馬の県議会と35市町村議会についてまとめた記事(「議員報酬、手探りの対応」2015年3月23日)によると、引上げ幅の大きさに対し、「補助金を削減している時期なのに」などと町民から批判が出て、町議選では数人が引上げ反対を訴えて当選した。選挙後、議会は検討委員会を設けて議論を重ね、2014年9月の定例会で27万円を10%カットして24万3,000円とする条例改正案を全会一致で可決した。
 ある議員は「(水上、月夜野、新治の)3町村合併で行事が増え、月に20日は拘束される。削減でやる気をそぐより、きちんと払ってそれに見合う仕事をしてもらう方が筋だ」、別の議員は「要は活動ぶりを住民に念入りに説明し、(適正な額だと)理解と納得を得る努力が必要」と語ったという。
 報酬の引上げは議員のなり手不足への対応が背景にあるが、一方で有権者の見る目も厳しい。減額しても、旧条例のときよりもなお4万7,000円多い。報酬に見合った働きをしてもらえばよいという考え方もある。その働きぶりをどのように客観的に評価するのかはたやすくない。稿を改めて、議員報酬に「成果主義」を導入し、議員の働きぶりを評価したが挫折した熊本県五木村議会のケースを検討したい。

この記事の著者

議員 NAVI

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る