2015.10.26 議会改革
『地方議会に関する研究会報告書』について(その4)
東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之
はじめに
これまで3回にわたり、総務省に設置された「地方議会に関する研究会」の最終報告書である『地方議会に関する研究会報告書』(以下『報告書』という)を検討してきた。前回は、議会の招集権を取り上げてみた。今回も、引き続いて、この『報告書』を検討してみよう。
決算の不認定
『報告書』の「第Ⅱ章(1) 議会制度及び議会運営のあり方」「第3節 議会制度に関する個別論点」では、「(2)決算の認定」が唐突に取り上げられている。なぜ、議会の招集権の次に来る個別論点が決算の認定であり、かつ、個別論点はこの2つだけなのかは、必ずしも説明されていない。
ただ、『報告書』では、近年の自治体議会で決算審議を重視する傾向があるとし、比較的好意的に運用の事例紹介をしている。議会が決算審議を通じて、首長の事務執行をチェックし、次年度の予算編成などの自治体の政策形成への関与を強化しようとする問題意識は望ましいと考えられているようである。
さて、このようなときに制度的な問題となるのが、議会による決算の不認定である。『報告書』では、この論点は、すでに第29次地方制度調査会答申において触れられているとして、①議会側がまずもって決算不認定の理由を首長や住民に明らかにする、②首長は議会から指摘された問題点に関しては決算審議で原因や善後策を説明する、③仮に決算不認定になった場合には首長は住民に対して善後策等を説明するように努める、という提言が紹介されている。
①は、議会が「数の横暴」の政局的に、つまり、決算の具体的内容ではなく、単に首長に政治的に信任しないというような理由によって、決算不認定をすべきではないという、規範論である。②は当然のことを言っているにすぎない。重要なことは③であり、決算不認定になっても、住民に対して善後策等を説明すればよい、というものであり、決算不認定に制度的な効力を持たせないようにしようというものである。