2015.09.25 政策研究
【フォーカス!】石炭火力、電力業界はどう動く
国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。
石炭火力、電力業界はどう動く
東京電力福島第1原発事故を受け、火力発電所の扱いが大きな問題となっている。原発の再稼働が進まない中、液化天然ガス(LNG)や石油よりも価格が安い石炭を燃料とした発電は、東京電力など一般電気事業者、電力自由化もあって特定規模電気事業者(新電力、PPS)が次々と計画を打ち出している。
今年7月に決定した政府の温室効果ガスの削減目標は「2030年度に2013年度に比べて26%削減」となっている。前提となる政府の長期エネルギー需給見通しで示したエネルギーミックスによると、総発電電力量に占める石炭火力の割合は26%だ。
しかし、2013年度実績では、石炭火力の設備容量は約4900万kW、CO2排出量は2.7億tある。2030年度には石炭火力のCO2排出量は2.3億tに抑え、設備容量に換算すると約4500万kWにする必要がある。
つまり、現状でも2030年度の設備容量を超えていることになる。さらに、現在の新設・増設の計画と老朽化を加味しても、2030年度の設備容量は約5800万kWになり、石炭火力によるCO2排出量は2.9億tに増加すると想定される。
「設備の稼働率、計画の進捗など不確定要素もあるが、石炭火力対策をとならなければ、26%削減の目標達成はできない」というのが環境省の分析だ。
これに対し、電気事業連合会加盟10社と電源開発、新電力有志23社などは7月17日、「自主的枠組み」と「電気事業における低炭素社会実行計画」を公表し、2030年度の温室効果ガスの排出係数は1kWh当たり0.37kg程度を目指すとした。
ちなみに、石炭火力の排出量は手法によって0.71~0.867kg、LNG火力が0.32~0.415kgとなっており、火力発電に頼っている限り達成はかなり難しいことが分かる。
この内容に対し環境省は「掲げられた数値をどう達成するのか、石炭火力のCO2排出量をどう減らすのか、PDCAで全体の削減が目標どおりにならない場合の措置はどうするのか。これら全てが固まっていない」と批判する。
千葉県袖ケ浦市のほか、山口県宇部市と愛知県武豊町の石炭火力計画に対し是認できないとの立場を示した。電力業界が自主的な取組の具体的な内容を示さない限りは、石炭火力の新設は認められない状態になっている。