2015.09.10 議会改革
第22回 「子ども議会」はどのように開催すべきか
回答へのアプローチ
議長が気にしている市長や教育委員会との関わりです。議長の意気込みは理解できます。しかし、市長や市の幹部の「答弁」機会があるなら、これは声をかけざるを得ません。子どもたちからしても、市政について調べると「尋ねたい」ことがたくさん生まれるはずです。その疑問点を市長などにぶつけ、解決策を提案する機会をつくってあげてもいいように思うのです。
また、「政治過程に関心を持ってもらい、その過程を学ぶ」というのであれば、教育委員会に協力をお願いするのはどうでしょう。目的のひとつが将来の有権者を育てることにあるわけですし、教育委員会を通じて「各学校を代表する議員(児童や生徒)」を送り込んでもらえるかもしれません。もちろん、「市制○十周年記念事業」、「議会基本条例制定記念」などと銘打って、議会改革などを議題とする「子ども議会」も可能です。この場合、子どもの質問に答えるのは、議長・副議長や議会運営委員長などになるのでしょうから、議会単独でも開催可能となります。しかし、市長や教育委員会と連携することで、「子ども議会」の可能性を広げることも可能となります。回答はCとしたいと思います。
実務の輝き・提言
市長や教育委員会と共催するとして、議会側としての検討事項をさらに考えてみたいと思います。1点目は、「子ども議会」を毎年、続けるかどうかです。共催という形をとると、一番「汗をかく」のは議会側です。子どもたちとの事前研究や議会見学など、正直、手間がかかります。その手間を考えれば、議会として、又は議会事務局として二の足を踏むかもしれません。ただ、それでもなお、できることならやり続けることをお勧めしたいです。子どもの頃、好きだった野球チームは、大きくなっても変わらないものです。議会で親切にしてもらった思い出を子どもたちは一生、忘れないことでしょう。ですから、ひとりでも多くの子どもたちに経験してもらいたいのです。もし、事務局の負担が大きいと感じるのなら、地元の大学生などに子どもたちの質問作成の手伝いをしてもらうのはどうでしょう。なりたての有権者と将来の有権者がそろって議会に目を向けてくれるチャンスとなるかもしれません。札幌市や小牧市など、大学生に「サポーター」として手伝ってもらっているところはいくつもあります(両市の子ども議会はいずれも市長側が主催しています)。
もうひとつ、これは事務局側の実務として注意しなければならないことがあります。「議長・副議長の出番をちゃんと確保すること」です。市長や市の幹部が答弁者になると、理事者側ばかりが目立つことになります。さらに、子ども議員の間から、議長・副議長を選出すると「子ども議会」に出席している議会側の人間は事務局職員だけとなります。ひどい場合には、「議場で子どもたちと記念写真に収まるのは市長だけ」ということにもなりかねません。これでは議会側の面目は丸つぶれです。ここは各地の子ども議会のやり方をヒントにしてほしいのですが、例えば、議長・副議長は「本物」を使う方法があります。「市長、もう少しはっきりと答えてください」とか、「ここは部長ではなく、市長に答えてもらいましょうか」などとアドリブを入れつつ、議事をつかさどるのもいいかもしれません。たとえ、議長や副議長を子ども議員から選出するとしても、開会と閉会に際して議長・副議長に一言もらうとか、まず、本物の「議長」が仮議長として座って、議長・副議長の選任を行うなどの方法もあります。また、議会終了後に議長室で「お茶会」をするなどの工夫もいいかもしれません。子ども議会に「委員会」を置く場合も見られますが、この場合には実際の委員長との作戦会議を設けるというのもひとつのアイデアでしょう。
こうしたことを提案すると「実際の議会ではやらないので……」とか「議長などにご負担がかかるので……」という、ネガティブ論に出合います。しかし、やるからには、みんなが満足するイベントとなるよう徹底的にこだわりたいものです。子どもたちにとっては議会とのファーストコンタクトです。この出合いが、議会の可能性を感じさせ、信頼感につながれば、議会にとっても力強い応援団となってくれるに違いありません。