2015.09.10 議会改革
第22回 「子ども議会」はどのように開催すべきか
議会事務局実務研究会 吉田利宏
■お悩み(悩める事務局課長さん 50代)
市議会事務局の課長をしております。今後、選挙権が与えられる年齢が引き下げられることもあり、議長より「『子ども議会』をうちでも計画してほしい」といわれました。その際には、市長や教育委員会との共催とすべきでしょうか? というのは、議長は「二元代表制なのだから、議会のみで行うことがふさわしい」というのです。どうかお知恵を貸してください。
回答
A 「子ども議会」は教育活動の一環であり、教育委員会を関与させずに行うことはできない。
B 議長のいうように、二元代表制により議会単独主催で行うべきである。
C 趣旨によっては議会単独も可能だが、市長や教育委員会の協力を得て行う方が開催方法に広がりが出る。
お悩みへのアプローチ
今年6月19日に「公職選挙法等の一部を改正する法律(平成27年法律43号)」が公布されました。施行日は1年後ですが、これにより、選挙権が18歳に引き下げられることとなりました。これを機会に若者の政治への関心を高めようとする取組が各地で行われ始めています。悩める事務局課長さんの議会でも、さっそく議長が関心を持ったようですね。この辺りの嗅覚はさすがです。「こども議会」は法改正が行われて始まったものではありません。以前より各地でいろいろと行われています。ただ、理事者側が主催することも多く、その意味でも議会が主導権を握って行うことは意味があります。議会として市民にアピールする機会にもなるのですから、何とかうまくサポートして成功させたいものです。
「こども議会」については、そのノウハウもだいぶ蓄積されていますので、開催すること自体は難しくはありません。ただ、最初に考えなくてはならないことがあります。それは、「目的」と「対象年齢」をどうするかです。
議会を身近に感じてもらう程度でいいというのであれば、議会見学の延長線上に捉えることも可能です。子どもたちは、本会議場に入れるだけでうれしいでしょうし、議長席に座れるようなことがあれば大興奮間違いなしです。これに少しイベントを加えれば、「子ども議会のようなもの」のでき上がりです。もちろん、対象年齢も低く設定できます。「○○市のすてきなところをみんなで考えよう!」、そんな「議題」なら、その場で楽しく議論できるはずです。面白い試みとしては、新潟県議会の「議事堂見学+体験!小・中学生議会」があります。学校で議会見学を行った際に、議場を40、50分借りて、児童・生徒が発表などを行うものです。これなら、少し学年が上がっても大丈夫です。「今年度の文化祭のテーマ」、そんな議題を県議会の本会議場で話し合えるなんて、なんとぜいたくなことでしょう。
ところが、「政治過程に関心を持ってもらい、その過程を学ぶ」という目的を主にするのであれば、議員となる「子ども」たちの年齢も上がります。また、議会を手本とする審議も行われることでしょう。全てアドリブというわけにはいきませんから、あらかじめ議会の仕組みを学び、事務局職員などの手助けを受けて市政を研究し、市長などへの「質問」を行うということになるかもしれません。
悩める事務局課長さんに計画を依頼した議長のイメージはどちらに近いのでしょうか。その点をしっかり見極めることが大切だと思いますが、「選挙権が与えられる年齢が引き下げられることもあり」とあるのですから、後者なのかもしれません。