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2015.08.25 政策研究

【フォーカス!】「ふるさと」って何だ

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国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。

「ふるさと」って何だ

 シンクタンクの「構想日本」が8月20日、「ふるさと住民票」の制度創設を提案した。
 呼びかけに人には、片山健也北海道ニセコ町長、高橋正夫北海道本別町長、菅野典雄福島県飯舘村長、清水聖義群馬県太田市長、金井康行群馬県下仁田町長、松本武洋埼玉県和光市長、景山享弘鳥取県日野町長、筒井敏行香川県三木町長の8市町村長が入っていたように、首長の関心は高い。
 現在、住民というのは一つの自治体に住民登録し、そこに納税をし、そして行政サービスを受けている。しかし、2011年の東日本大震災後、東京電力の福島第1原発事故で汚染された地域を中心に、今も多くの人が住所地を離れ避難を余儀なくされている。
 役場そのものが自らの自治体に置けないという異常事態も起きている。そのため「二重住民票」という考えが提唱されたこともあった。
 近年は国が地方創生と称して、「二地域居住」「地方移住」と盛んに言っているが、東京と地方とで半分半分に住むようになったら、住民票はどうすればいいのか。介護のために親元と自宅で半々に住む人も多くいるだろう。その場合の住民サービスは居住実態とは合っていない。ふるさと住民票とは、実は古くからある問題である。
 今回のサービスの対象者は、①自治体の出身者、②ふるさと納税を行った人、③自然災害などで他市区町村へ避難移住している人―などとしている。
 提供するサービスも地方自治体の自治事務の範囲内として、自治体広報などの発送、パブリックコメントへの参加、条例に基づく住民投票への参加、公共施設(公民館、スポーツセンター、駐車場など)の住民料金での利用、相続や親などの介護関係書類の郵送登録の受付、ふるさと住民票による本人確認と、ソフトな内容に抑えるようだ。
 同じ「ふるさと」を冠する「ふるさと納税」は2008年から始まった。「ふるさとへの恩返し」が本来の趣旨だが、地方創生の掛け声のもと、2015年度の税制改正ではサラリーマンが利用しやすいようになり、減税対象となる寄付の上限額も引き上げられた。
ただ、自治体が寄付金を得るために、多くのお礼を返す「お得感競争」に走りすぎているという批判も強まっている。
 この二つの「ふるさと」に通奏低音としてあるのが、都市と地方の税収格差をどう是正するのかという問題である。この点からは「ふるさと住民票」に進化の可能性がある。
 例えば、都会の自治体に住む人が、自分が応援したい自治体、生まれ育った自治体に「ふるさと住民票」をつくれば、その自治体に住民税の半分を納税できるような仕組みにするのはどうか。東京一極集中による税収の格差を是正する方法として、首長の間で時々出てくる議論だ。
 この制度が導入されれば、「足による投票」ではないが、住民票を得るために、人々の共感を得られる行政サービスを導入するための自治体間の競争が始まる。つまり「住民票という財源再配分」をめぐって善政競争が起きる。
むろん、現在の地方自治、地方交付税の制度にとっては想定外だろうが、同じ「ふるさと住民票」と称するなら、これぐらい思い切った政策を提唱してもいいのではないか。

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