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2015.08.25 議会改革

議会事務局から議会局へ

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東京大学名誉教授 大森彌

「議会局」設置の動き

 地方自治法(以下「自治法」という)138条は、次のように規定している。「都道府県の議会に事務局を置く。2 市町村の議会に条例の定めるところにより、事務局を置くことができる。3 事務局に事務局長、書記その他の職員を置く。4 事務局を置かない市町村の議会に書記長、書記その他の職員を置く。ただし、町村においては、書記長を置かないことができる。5 事務局長、書記長、書記その他の職員は、議長がこれを任免する。6 事務局長、書記長、書記その他の常勤の職員の定数は、条例でこれを定める。ただし、臨時の職については、この限りでない。7 事務局長及び書記長は議長の命を受け、書記その他の職員は上司の指揮を受けて、議会に関する事務に従事する。8 (略)」
 2015年に「議会事務局」を「議会局」に変更した滋賀県大津市議会の議会基本条例26条は、次のとおりである。「議会に関する事務を処理するため、法第138条第2項の規定に基づき、議会に事務局として議会局を置く。2 議会局に事務局長としての局長及び書記その他必要な職員を置く。3 職員の定数は、大津市職員定数条例(昭和25年条例第11号)の定めるところによる。4 議会は、議会及び議員の政策立案能力を高めるため、議会局の法務及び財務等市政に関する調査機能の強化に努めるものとする。」(下線は筆者)
 大津市議会のほかにも、すでに、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、相模原市などの議会が、「議会事務局」を「議会局」に変更している。神奈川県議会基本条例は、県議会の機能強化等を規定した10条5項で、「県議会は、議会活動を補佐する議会局の機能強化に努めるものとする」としている。
 法文の解釈としては、「事務局を置く」とし、「事務局に事務局長を置く」としているから、組織名として「事務局」と、役職名として「事務局長」といわなければならないかどうかが問題になりうる。現在でも、多くの自治体議会では、法の規定をそのまま使って「事務局」「事務局長」としており、特に問題視してはいない。あえて変更するのであれば理由がいる。

呼称変更の意義

 大津市議会の場合は、「議会に事務局として議会局を置く」「議会局に事務局長としての局長を置く」というように、読み替えている。法律は「事務局」だがそれを「議会局」と、「事務局長」は「局長」と呼ぶとしている。この呼称の変更は自治体議会の裁量の範囲ということになる。
 この呼称変更の意義はどこにあるのか。一般には、組織名の変更は、その組織に属するメンバーの一体感や使命感に影響を与えうる。「議会事務局」の職員であることと「議会局」の職員であることとでは何が異なるのか。それは、従事すべき「議会に関する事務」をどう理解するかによっている。
 都道府県議会議長会設置の「都道府県議会制度研究会」は、2005(平成17)年3月にまとめた「中間報告」において、「改革 ⑦議会事務局の機能を明確化せよ」と提言した。当時の認識は次のようなものであった。自治法は「議会に事務局を置く」としながら、その役割を議会の庶務として位置付けているため、議会事務局の実態は、議会の本会議や委員会の運営の補助とその他の庶務的事項の執行を前提とした体制となっている。議会事務局の機能を、単なる議会運営の補助や庶務だけでなく、議会の政策提案機能、監視機能及び調査機能等を補佐する機関であることを明確に位置付けるためにも、自治法138条の規定中の「庶務」の文言を「事務」と改めるべきである。
 この提言もあって、2006年の改正自治法で「庶務」が「事務」に改められた。もちろん、概して、議会事務局に「庶務課」が置かれているから、庶務活動が不要になったわけではないが、政策の提案や法務に関する機能の強化がねらいであった。
 議会事務局が「議会に関する事務」に従事するという場合、事務局はどういう行動をとればよいのかが問題になる。庶務が事務に変わっても、議会運営がうまく回るようにこまめに調整し、議員のご機嫌をとっていればいいというのでは、変更の意味はない。大津市議会の場合は、「議会事務局」を「議会局」に変更することと、「議会は、議会及び議員の政策立案能力を高めるため、議会局の法務及び財務等市政に関する調査機能の強化に努めるものとする」ということを連動させている。議会に関する事務の中に、議会及び議員の政策立案能力を高めるための「議会局の法務及び財務等市政に関する調査機能」が明示されている。
 大津市議会の場合は、議会事務局職員から「議会局」であるべきだとする意見が出され、異論を唱える会派を説得し、「議会局」に組織再編を行っている。これによって事務局職員のモチベーションアップを図ることが議会・議員の重要な役割だと考えられたという。士気の高揚になるのは、職員の提案が受け入れられたからだけではなく、議会及び議員の政策立案能力を高めるための補佐機能こそが「議会局」の中心的事務(政策事務)になり、職員にとって「議会局」が働きがいのある職場になりうるからである。
 大津市議会局議会総務課長の清水克士氏は「名は体を表す。(変更することで、人事権を有する)議長が、より優秀な職員を議会局に異動させることができる。また、議会局にすることで『議員のお世話係』『ルーティンワーク』といった(負の)イメージを払拭することができるのではないか」と述べている(「変わるか!地方議会160」ガバナンス2014年9月号、123頁)。

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