2015.08.10 政策研究
【フォーカス!】小さな拠点
国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。
小さな拠点
最近、地方創生の考え方として「小さな拠点」という表現をよく聞く。もともとは、高知県が使い始めた言葉だ。高齢化と過疎に悩む中山間地にある農山村の暮らしを支える政策として2012年度から、集落活動センターを県内の各地に設置している。これが自らの力で地域を守ろうとする組織の活動を後押しする小さな拠点となるわけだ。
センターには「ふるさと応援隊」として職員を派遣、地域の活性化策に加えて高齢者世帯の見回り、有害鳥獣対策などあらゆる課題に住民と一緒に取り組むことを目指す。Uターンしてきた若者らに雇用の場を提供することも目指し、10年間で130カ所の立ち上げを予定している。
もう一つの流れが、島根県雲南市などで始まった「小規模多機能自治」だ。この言葉は、おおむね小学校区を単位とした住民参加のまちづくり活動を指す新しい言葉だ。
雲南市では市内に30ある交流センターごとに、町内会や消防団、営農組織、PTAなどが集まって「地域自主組織」をつくっている。この自主組織は合議制で運営し、カリスマ的なリーダーがいなくても「住民による自治」を可能にする仕組み。
市は年間約800万円の交付金を渡し、これを原資に組織によって5~15人を雇用する。多くの組織が農村レストランなどの収益事業も実施しながら、高齢者の福祉や生活支援、産業おこしなどに取り組んでいる。
全国の市町村の4分の1が「暮らしを支える活動に取り組む組織がある」としており、人口減少、過疎の進展でさらに必要性は高まっている。
今後は活動を支援するため法人格の付与が重要となる。そうすれば、会社やNPO法人のように委託契約や土地、施設の所有、寄付の受け付けも容易になり、税制優遇を受けることも可能になるからだ。小規模多機能自治推進ネットワーク会議は「スーパーコミュニティー法人」という新しい法人格の導入を提案している。
一方、経済産業省は「日本の『稼ぐ力』創出研究会」で「ローカルマネジメント(LM)法人」を検討、路線バスやガソリンスタンド、小売り、介護、保育など地域を支えるサービスを総合的に提供することを想定している。