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2015.07.27 議会改革

『地方議会に関する研究会報告書』について(その1)

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之

はじめに

 1990年代後半より日本は「改革の時代」であり、多くの制度改革がなされてきた。自治制度もその例外ではなく、2000年分権改革や「平成の大合併」など、良くも悪くも、改革が続けられてきた。自治体議会に関しても同様であり、分権改革に応じた自治体議会を構築することは非常に重要な課題である。そのため、国レベルでの法制度改革もなされてきたし、また、自治体レベルでも、いわゆる「議会改革」への取組がなされてきた。その流れの中で、2015年3月には、総務省の「地方議会に関する研究会」が『地方議会に関する研究会報告書』(以下『報告書』という)をとりまとめた。公表は統一地方選挙後の4月30日である。今回は、この『報告書』を検討してみよう。

課題認識

 『報告書』第Ⅰ章(1)によれば、主な課題としては、以下のような事柄が挙げられている。①地域の実情に応じた効果的な議会機能の発揮が求められている。②議員の構成について、女性議員の割合が著しく低く、また、60歳以上の議員の割合が特に町村議会において高い。つまり、住民構成と比較した場合に偏りがある。③都道府県議会や町村議会において無投票当選の割合が増加傾向にある。議員のなり手不足が深刻な問題である。④地方選挙の投票率が低下するとともに、都市部においては議員と住民との関係が希薄である。総じて、地方議会に対する住民の関心が大きく低下している。⑤政務活動費の使途の問題などにより、議員の資質や活動に注目が集まるとともに、議会のあり方が問われている。地方議会及び議員に対する住民の信頼確保が大きな課題である。
 以上のような『報告書』の課題認識は、総じていえば常識的なものであろう。もっとも、子細に見れば、「常識」の限界はある。例えば、①の「議会機能」というのは、そもそも何を意味しているのか、必ずしも明らかではない。そもそも、果たすべき議会機能が明示的には不明なまま、「議会は機能を果たしていない」と批判されることも、しばしば見られる「常識論」である。
 また、④のような「関心の低下」と、⑤のような「注目」とは同時並行して起こっているのであって、これをどのように理解すべきなのかは、課題設定においては重要である。あえていえば、⑤で、悪い意味で「注目」を集め、その結果、④で、良い意味での「関心の低下」につながっていると見ることもできよう。しかし、逆に、⑤で悪い意味で「注目」を集めている以上、④のような「関心の低下」は起きていないとはいえる。関心はあっても投票に行かないこと、議員と濃厚な関係をつくらないこと、などは充分にあり得るからである。
 ③無投票当選は、必ずしも「なり手不足」を意味するとは限らない。というのは、有力議員が地盤を固めていれば、立候補しても当選可能性がなく、それゆえに立候補しないで無投票になるということもあり得る。それゆえ、「なり手不足」を問うのであれば、議員の欠員(過少立候補)が生じていることを、指摘すべきかもしれない。しかし、議員の場合、通常は欠員が出るようであれば、とりあえず立候補するようなことは起きやすい。民生委員や消防団員の欠員、あるいは町内会役員の「担い手不足」とは、依然として問題は違うのかもしれない。とはいえ、あらかじめ立候補予想人数を想定して、その人数に合わせて定数削減をして、結果的に無投票当選になっているのであれば、「担い手不足」である可能性もある。
 ともあれ、『報告書』では、上記の①~⑤の課題に即して、第Ⅱ章以下で、それぞれ検討が加えられている。その意味では、非常に明解な『報告書』の目次立てになっている。

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