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2015.07.10 議会改革

第21回 一般質問の廃止は可能なのか?

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回答へのアプローチ

 ただ、もう一度、「まっさら」な状態から一般質問を眺めてみると、違う結論も見えてくるかもしれません。一般質問の制度は地方自治法上、規定がありません。普通、会議規則に「一般事務につき質問することができる」といった規定があり、これを根拠に行われています。一般質問がどうしても行わなければならないものであるなら、その効果を最大化する以外の方法はありません。しかし、そうでないなら、「一般質問とは別な形で、行政監視機能や政策提案機能を発揮すべき」とする議会があってもいいことになります。
 少し余談になりますが、1955(昭和30)年に改正されるまで、国会法で本会議における「自由討議」という制度が定められていました。これは議員同士の討議や国政に関する意見表明などを想定した制度でした。

○国会法
 (昭和22年制定時)
第78条 各議院は、国政に関し議員に自由討議の機会を与えるため、少なくとも、2週間に1回その会議を開くことを要する。
2・3 略

 そして、制定時の内務省はこの自由討議を自治体議会でも「普及」させようと考えました。会議規則に定めての導入を奨励していたのです。そのねらいは2つありました。その2つとは、「一般議案審議の際における無用な関連質問を減らさせ、議事能率を上げさせる」ことと「議員の真価を選挙人に周知させる」(2)ということです。簡単にいえば、「議員の顔を立てつつ審議の促進を図る」ということができるでしょう。「審議の充実」ではなく「審議の促進」こそ、この制度の肝だったわけです。
 国会における自由討議の運用は会派代表質問に近いものとなり、やがて、それも行われなくなりました。その理由のひとつに「予算審議の柔軟性」がありました。予算での質疑は「何でもあり」の柔軟性が認められています。しかも、委員会での質疑ですから、自らの意見も述べることができます。予算委員会が花形委員会となれば、もはや「自由討議」での代表質問など必要ないのです。そして、前述のように1955年の改正で自由討議の制度は廃止され(3)、自治体議会においても「自由討議」の制度は失われました。そして、自治体議会に形を変えて残ったのが「一般質問」、「代表質問」の制度というわけです。1956(昭和31)年の制定時の標準都道府県議会会議規則には一般質問について現在と同じ条文が見られます。その後、時代を下るにつれ、一般質問のウエイトは高くなります。権限が限られていた分権改革前の議会では、一般質問が「議員の顔を立てつつ審議の促進を図る」格好の仕組みとして独自の発展を遂げていったといえるでしょう。
 少し歴史話になってしまいましたが、こうした視点で「一般質問」を見てほしいのです。まず回答Cは明らかに誤りです。また、回答Bは「充実させる」のはいいとしても、「議会の生命線である」根拠も必然性もありません。ですから、これもとれません。理由は後で述べますが、Aを回答としたいと思います。

実務の輝き

 歴史的な沿革のある「一般質問」ですが、現在においても必要とされる背景はあります。例えば、会派により委員会が割り振られ、希望する委員会に属せなかった議員もあるわけですが、こうした議員にとって一般質問は関心テーマについて見識を示せる唯一の場面なのでしょう。ただ、それでもなお「一般質問が絶対必要!」ということにはなりません。
 まず、委員会中心主義をとっているのですから、会派の力関係だけで委員会の所属が決まることを改善しなければなりません。これを改めないで「だから一般質問の制度は…」というのは本末転倒です。さらにいえば、国会以上に予算、決算への審議を高めて、そこでの「質疑」で執行部の所見を求めたり、意見を表明するという方法だってあるはずです。議会にとっての「予算」は最も大きな権限です。この予算の議決権を盾にとれば、行政監視機能や政策提案機能を発揮することができるはずです。また、住民にとって、予算との関係での指摘は「分かりやすさ」にも通じることでしょう。法的な根拠のない「一般質問」よりよっぽど効果的かもしれません。特に、通年議会を導入する議会においては「効率的な審議」より「実のある審議」に軸足を移すことができるわけですから、多くの時間を消費する一般質問の時間を委員会での審議充実に充てることもできるはずです。それこそ委員会中心主義を選択している議会のするべきことかもしれないのです。

提言

 理由もなく一般質問をしない議会は問題外です。ただ、熟慮の結果として「一般質問をしない」とする議会があるとすれば、それはそれで「見識」といえます。いや、それぐらいタブーに切り込まないと本当の議会改革は行えないかもしれません。一般質問の改革は、「入り口」(初歩的)の問題であると同時に、「出口」(到達点)の問題かもしれないのです。改革まい進さん、まずは「一般質問を廃止しよう」と主張する議員の意見の趣旨をよく聞いてみてはどうでしょうか? 議会改革の常識(!?)にとらわれない、新たな改革の切り口が見つかるかもしれませんよ。


(1) 龍谷大学の土山希美枝先生がこうした視点からの問題点の指摘やアドバイスをしています。議員NAVI Vol.41~43での連載「質問力を上げよう」が参考になります。
(2) 鈴木俊一『新地方議会の運営』時事通信社(1948年)96・97頁。
(3) 自由討議の廃止の事情については、岡崎加奈子「国会法の変遷と委員会制度の展開(三)」法学志林102巻3・4合併号(2005年)が詳しいです。

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