地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2015.06.25 政策研究

第4回 若者の安定志向や草食化を確かめる

LINEで送る

草食男子はいつ頃現れたか

 草食男子という用語は、2006年10月にコラムニスト・編集者の深澤真紀によって初めて使われ、2008~2009年には流行語となった。しかし、草食男子は、徐々に現れてきたのか、それとも急に現れたのか、もし急に現れたのなら、いつ頃からなのか、といった点を示すデータはこれまで紹介されたことがなかった。こうした疑問に応じられるデータを発見したので図2に示す。

図2 草食男子はいつ頃現れたか図2 草食男子はいつ頃現れたか

 日本生産性本部が毎年行う新入社員調査の中に、「職場以外では、どんなときに一番生きがいを感じますか」という設問がある。選択肢の1項目として「親しい異性といるとき」があるが、これを選択した若者の割合で、異性間交遊への関心度をうかがうことが可能である。
 この設問への回答結果は、それほど特徴的なものではなく、それゆえ、日本生産性本部によって発表される概要版で取り上げられず、また概要版の中から報道内容を選択するのがルーティンとなっているメディアも紹介することがなかった。上位3つの選択肢は、「友達や仲間とつきあっているとき」が4割台で最も多く、次に「スポーツや趣味に打ち込んでいるとき」の約3割が続いている。第3番目の主要回答である「親しい異性といるとき」は、以前はほぼ2割前後で安定的に推移していた。
 ところが、2000年頃から、突如、傾向的に低下が始まり、最近では1割を下回っている。以前から、高校や大学のクラスには、必ずといっていいほど、一定の割合で、同性同士の遊びよりも優先して、異性との付合いに生きがいを感じているように見える人がいたものである。こういう異性間交遊優先の人が2000年頃を境に、十数年で半減したのである。これを草食化の進展といってもよいと思う。
 この意識調査の回答者である新入社員は男性ばかりではない。この調査が始まってから今までに2割台から4割台へと女性比率は上昇している。したがって、男女計でのこうした意識変化は、女性比率の上昇によるものとの疑いが残る。そこで、図には、「親しい異性といるとき」と回答した人の男女別の比率の推移も加えておいた。
 これを見ると、男女ともに2000年頃から比率が低下しており、草食化がこの頃から始まっていることが裏付けられる。そればかりでなく、もうひとつの特徴、すなわち2000年頃から男女差がなくなったという事態の変化にも気づかされる。
 2000年頃までは、異性間交遊を生きがいとする若者については、男性が女性をほぼ5%程度上回っていた。つまり、男は肉食系、女は草食系の傾向があったとみなすことができよう。これは、古今の小説、戯曲などでも、いわば当然の前提とされてきたことである。実際には、女性が男性より異性に関心がないということはなかろうが、意見の表明や行動原理の説明では、そういうことになっていたのである。ところが、これが、2000年頃、すなわち世紀の変わり目で、男女同等へと大きく変化したのである。そして、2000年代では、むしろ女性の回答率の方が男性を上回り、異性間交遊に相対的に積極的との結果となった年も多い。「肉食女子」という言葉が「草食男子」と対で説得力を持ったのもうなずける状況である。なお、「肉食女子」が現れたのは、バブルが崩壊しつつあった1990年からであることも図から見て取れる。まさにお立ち台で踊るボディコンギャルによって一世を風靡(ふうび)したディスコ「ジュリアナ東京」の開業期間(1991~1994年)に当たる時期が転換点だったことが分かる。
 男の方から女にアプローチするのが当然という価値観が歴史的に長く続いていたことを思うと、これは、大げさにいえば、文明史的な変化ともいえる。そして、データの推移からは、バブル期の狂騒の余韻が収まった2000年頃を境に、異性への関心度における男女差が消滅するとともに、異性間交遊に関心が薄れるということを意味する「草食化」が男女そろってどんどん進み始めたわけである。もっとも、何故その時期からなのか、また何の要因でそうなったのかについては、いまだ説得力ある説明を思いつかない。しかし、いずれは過去を振り返って、あのときから日本はこう変わったのだと、重大なターニングポイントとして認識される日が来る予感がする。

この記事の著者

議員 NAVI

今日は何の日?

2024年1013

グリニッジが経度の基準子午線となる(1884)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る