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2015.06.10 政策研究

【フォーカス!】◆東京圏からの高齢者移住

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国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。

東京圏からの高齢者移住

   東京圏に住む高齢者からは「ではどうすればいいのか」。こんな嘆息さえ聞こえそうだ。
「消滅可能性ショック」で安倍政権に地方創生への取り組みを促した民間団体「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務)が6月4日に東京圏高齢化危機回避戦略を公表したからだ。
 国は既に昨年末の総合戦略で地方への移住を進めることを提案、日本版CCRC構想の検討を開始している。創成会議はこの動きを先取りし、介護施設や病院、介護や医療の人材に余裕がある26道府県41地域への移住を促すよう提言した。
 論理的にはこういう構図だ。東京圏(千葉、埼玉、東京、神奈川の1都4県)では2025年までの10年間で、「団塊の世代」が一挙に75歳以上になるため後期高齢者は175万人増え572万人となる。その増加数は全国の3分の1を占めるほどだ。
介護難民が生まれる恐れがある。この介護や医療の需要を賄うとすれば、人材を80万~90万人増やす必要があるという計算だ。
 これに対し、地方では人口の流出が続いていることもあって、高齢者人口も減少する地域が多い。この結果、介護や医療で余裕が出てくる。この状況を地方への移住などで調整せずに放置していれば、地方の介護施設や病院が閉鎖され、給料の高い東京に人材が集まることになる。つまり、再び東京一極集中が起き、地方での人口減少に拍車を掛けるというわけだ。
 この問題に対応するため、東京圏と国は6月2日に「1都3県の地方創生に関する連絡会議」を開いている。CCRCも含めた地方移住が議論されているが、知事側は前向きではなかった。
 創成会議の提言に対しては、黒岩祐治神奈川県知事が「医療や介護は地域の中で、皆さんの顔が見える関係があってはじめて生きてくる」と指摘し、高齢者の移住促進に違和感を示した。舛添要一東京都知事も「『施設が足りないから移住を』は乱暴だ」と話す。
 両知事の意見は正論だが、これが通じるほど現状は甘くない。単身の後期高齢者も急速に増えて、地縁、血縁を拠り所にした介護はもはや通じない。地域包括ケアと施設の組み合わせで乗り切るのが国、自治体の現在の方針だが、ほんとに機能するのか。移住も含めた方策を検討すべきなのか。冷徹に検証する必要がある。

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