2015.05.25 政策研究
【実例 東京都足立区】老朽家屋等の適正管理
老朽家屋等の適正管理に関する条例
条例制定に至る発端は、区内で起きた空き家の外壁剥落事故でした。平成22年3月、区内の通学路に面する空き家の外壁が強風の影響で大量に剥落しました(写真参照)。そのまま放置することは危険であるため、緊急の安全対策として民法の「事務管理」規定に基づき、危険部分の除去と最小限の補強措置を行いました。その後、所有者が特定でき、外壁等の最終補修(所有者負担)と歩道の安全管理対策(区負担)を迅速に行いました。
幸い通行人はなく、人身事故にはなりませんでしたが、区内には相当数の危険家屋が存在する可能性があったため、平成23年度に厚労省の緊急雇用創出事業を活用し、区内の危険家屋の実態調査を行い、法的な対応策の検討を始めました。
平成22年3月、区内の通学路に面する空き家の外壁が強風の影響で大量に剥落。
法的な対応策については、建築基準法による強制的な措置(命令及び代執行)を最後の砦(とりで)として意識しつつ、強制的な措置ではなく、指導・勧告と助成を組み合わせた方法を、平成23年10月に条例として定めました。
同条例・規則等の内容には、主に以下の特徴があります。
○老朽家屋等の調査・指導・勧告
適正に管理されていない建物の実態調査をし、危険な場合は、所有者等に安全を確保するように区が指導・勧告を行います。
○老朽家屋等の解体除却工事費を助成
区の指導に従って建物を解体する建物所有者に助成します。
木造……解体除却工事費の2分の1(上限50万円)
※平成25年1月から平成28年3月まで復興税活用により10分の9(上限100万円)
非木造……解体除却工事費の2分の1(上限100万円)
○危険切迫時は、所有者等の同意の上、緊急安全措置を実施
建物等の危険な状態が切迫している場合で、所有者等が自ら危険な状態の解消をすることができない場合、所有者等の同意を得て、危険な状態を回避するために区が必要な最低限度の措置をとることができます。
○専門家による老朽家屋等審議会を設置
助成金を支出するための公益性と客観性を担保することや個々の老朽家屋等の状況及び対応方針について諮問するため、老朽家屋等審議会を設置しています。