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2015.05.25 議会改革

選挙啓発という無駄

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之

はじめに

 2015年4月の統一地方選挙が終了したが、当初から予想されていたように、住民の関心を高めることもないまま、無投票当選や低投票率のまま終了した。他方、2015年5月17日の大阪市民投票では、投票率は66.83%と、2011年府市合わせ首長選挙の60.92%と並んで、それなりの高さであった。投票率は常に低いわけではない。
 ともあれ、住民の信託によって、公選職政治家には民主的正統性が与えられる以上、投票率の低さは、公選職政治家の正統性の低さにつながるものであり、代表民主制の基盤を掘り崩しかねない。

選挙啓発運動の無意味さ

 以上のような問題意識に立って、投票率を高めるための様々な啓発が、正論としては主張され、また、実際にも取り組まれるものである。各選挙管理委員会は、様々な広報を行い、あるいは、「明るい選挙推進協会」やマスメディアの報道も、一般にはその方向で行われる。しかし、こうした営みは大抵の場合、ほとんど効果がない。
 人が投票行動に行くのは、義理人情や地縁血縁などの柵(しがらみ)を除けば、「面白い」ことがあればこそ、である。最も「面白い」のは、候補者が接戦を繰り広げて加熱していたり、地域社会を二分するような大争点があるときである。上記、大阪市民投票などが好例である。もちろん、これは、重要な争点だからであり、別に「面白い」から遊びで投票に行くわけではない、という至極、真面目な反論があろう。実際、選挙でも候補者が競っていれば、相対的に自分の1票が帰趨(きすう)を決める確率は高くなるから、実質的な「1票の価値」が重くなるのであり、投票の意味が増すのであって、投票に行くことの徒労感が減るので、それなりに合理的である。いずれにせよ、選挙結果が不透明で競り合っていることが、投票率向上の最大の起因である。
 ところが、「中立的」でなければならない選挙管理委員会や行政当局、さらには、「公益」的な選挙啓発団体ができることは、選挙戦の帰趨に影響を与えないような啓発である。影響を与えてはいけないのは選挙の公正中立性からは、当然である。しかし、そのような啓発は、投票率の向上に全く役に立たない。もともとの消化試合のような「白けた選挙戦」の「白け度合い」を、これらの啓発運動は変えてはいけないからである。

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