2015.05.11 政策研究
【フォーカス!】◆空き家対策
国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。
空き家対策
空家対策推進特別措置法が5月26日に全面施行となった。深刻化する空き家問題に対する国レベルの取り組みがスタートする。地方自治体が主導することで始まる政策は多いが、空き家対策はその典型例といえだろう。
自治体では、埼玉県所沢市が住宅の所有者に適正な管理を求める条例を2010年10月に制定した。これをひな形にして秋田県大仙市など多くの自治体に条例づくりが広がった。
空き家対策は高齢化と人口減少が進む地方の問題と受け取られている面もあるが、実際には政令指定都市の半数が空き家対策を盛り込んだ条例を制定している。全国に共通した課題といえる。条例を策定した自治体数は2014年10月現在、400を超えている。空き家数も800万戸を超え、空き家率は13.5%(2013年速報値)に達した。今後も改善する見通しはない。
この状況を受け議員立法でつくられ2014年11月末に公布されたのが、この「空家等対策推進特別措置法」となる。特措法は、空き家問題に対応するため①市町村による対策計画の策定、データベースの整備②所在や所有者の調査での固定資産税情報の内部利用③適切な管理の促進―が中心となっている。
特措法で評価できる点は、固定資産税情報を調査に使えることを明確にしたことだ。国としての最低限の役割を果たしたといえる。残りは多くの自治体で取り組んできたことを全国共通の手法として広めたことになる。
ただ、特措法ができたからといって問題は解決しない。住宅の所有者に社会的な責任を十分に果たしてもらう必要がある。しかし、所有者の高齢化や負担能力の減少に加えて、相続を重ねることによる責任感の欠如も相まって、自治体による取り壊しが必要となる空き家はどんどん増えてくる。
これらの財政負担をどう避けるかは大きな問題だ。これまでは有価物として売買できた土地や住宅が、需要がない地域ではいわば“廃棄物”のような扱いさえ受けている。大きな転換期に来ている。
ストック重視といいながら経済成長を優先するあまり、新築住宅の建設を優先してきた国の住宅行政、あるいは、東京一極集中を容認してきたこの国の政策の在り方など多くの懸案が背景にある。一つの自治体では到底解決できない。国による総合的な対策が待たれる課題である。