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2015.04.27 政策研究

道路を地下に移し、河辺を遊歩道に変えたドイツ・デュッセルドルフの今

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元日本経済新聞論説委員 井上繁

 イタリア・ローマのスペイン広場や、欧州各地の聖堂前などの階段は、いつも多くの旅人たちでにぎわっている。同じ階段でも、ドイツ・デュッセルドルフのブルク広場前のそれは少し雰囲気が違う。目の前をライン河が流れ、貨物船や観光船が絶え間なく行き来する。太陽が対岸に沈む頃には、そこに座るだけで人々の顔があかね色に染まる。街の雑踏から離れ、雄大な眺めと四季の移ろいが楽しめる。
 ライン河に沿うこの辺りは、1993年まで地上を連邦道路が通っていた。このため、河川と旧市街地とは分断され、水辺は市民から遠い存在だった。
 連邦道路のうち、北のオーバーカッセラー橋と南のラインクニー橋の間の約2キロメートルの地下化工事に着手したのは1989年である。4年後の1993年に完工した。地下部分は自動車専用道で片側2車線。オーバーカッセラー橋側の出入口は両方向の車線の併走型、ラインクニー橋側は入り口と出口の分離型である。その上に現在のライン河畔遊歩道が完成したのは1995年である。
 デュッセルドルフの人口は59万2,000人、ノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州の州都である。この都市では、1979年頃から、河川と市街地との分断や、道路の混雑、環境の悪化などの問題が議論されるようになったが、改善策は具体化しなかった。
 連邦道路地下化の背中を押したのは、1988年にNRW州議会議事堂がラインクニー橋近くのライン河畔に移転したことである。完工の数年前から道路によって切り離された状態の解消が議論されるようになった。
 今、遊歩道の長さは地下に潜った道路と同じ2キロメートル、幅は最も広い箇所で40メートルである。地下化した部分の地上には2段の遊歩道を設けた。
 下段の遊歩道は、アスファルト道のほか、一部は芝生広場である。増水時には水につかることを想定している。普段は、岸壁の波打ち際まで近寄ることができ、親水性が高い。陸寄りには仮設のレストランやビアホールが並び、川風に吹かれながらゆったりした時を過ごす人たちでにぎわっている。
 上段の道は3種類あり、ライン河寄りが歩道、陸側が自転車道である。それぞれに波型の敷石を敷き詰めてある。その中間は砂利道である。歩道の脇には、川を望む形でたくさんのベンチが並んでいる。空いているのを探すのに苦労するほどだ。歩道の途中には2本の排気塔を設置している。1本は傾いているため、「踊る双子」の愛称が付いている。冒頭に記した階段は、ブルク広場前にあり、下段の遊歩道と、上段のそれを結んでいる。
 遊歩道の街路樹はプラタナスに統一した。今日では見事に成長して並木道を形成している。暑い季節は日陰をつくり、葉の落ちる冬にはその下のベンチで日光浴を楽しめる。
 高架陸橋のラインクニー橋下の空間にはアポロ劇場がある。全館がガラス張りのユニークなつくりである。その前の遊具のそろった芝生広場とともに大事な誘客スポットになった。
 アポロ劇場と遊歩道を挟んで反対側の陸橋の下には、有料の貸し自転車が並んでいる。ドイツ語を含め9か国語で「貸し自転車」の表示があり、日本語で「レンタサイクル」とも書いてあった。係員に尋ねると、「明日は団体の客が来るから、予約した方がよい」とのことだった。人気ぶりがうかがえる。単に自転車道をつくっただけでは、利用は地元の人たちだけに限られる。9か国語の表示には、多くの外国人に気楽に活用してもらいたいとのメッセージが込められている。
 ブティックや飲食店の並ぶ旧市街地からライン河畔まで歩いて散策できるようになったことで、人々の行動範囲が格段に広がった。
 ラインクニー橋やNRW州議会議事堂のさらに南寄りの地域は、かつてデュッセルドルフ港としてライン河交易で重要な役割を果たした。その後、産業構造の転換が進んで荒廃の一途をたどっていたが、20世紀末に「メディア・ハーバー」として大きく変貌した。
 古い岸壁や階段、線路などはそのまま保存した一方で、かつての倉庫街は、斬新なデザインの建築コンプレックスに変わった。ここには、国際的な建築家たちのショーウインドーのような建物が並んでいる。遊歩道を訪れた人の多くは、今ではここまで足を延ばすようになった。
北のオーバーカッセラー橋側の出入口は併走型。道路の上は遊歩道。北のオーバーカッセラー橋側の出入口は併走型。道路の上は遊歩道。

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