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2015.03.10 議会改革

議員定数と代表性

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おわりに

 こうしてみると、多様な住民の意見を、限られた数の議員で代表するのは極めて困難であることが分かる。したがって、現行の議員数を多少増やしても、議会の代表性が格段に増すわけでもない。とはいえ、議員数を減らせば、相当に議会の代表性は失われる。《議員は住民を充分に代表できている》と、議員自身が思い上がってはいけない。同時に、住民も、《どうせ議員は住民を充分には代表していない》のだから《減らせ》と、短絡的に自暴自棄になってもいけない。
 限られた議員数で住民を代表するには、直接民主制的な手法で補完が仕切れないならば、議員の日常活動で補完するしかない。無色透明の代理人として、個々の住民の全ての要望を、その是非弁別を仕分けることなく、議会の議論の場に登場させ、また、首長・執行部・所管部課職員や議会に全て取り次ぐということである。いわば、《依頼人から相談された弁護士》のようなものである。議員本人の意思がどうであれ、依頼人である住民の意向に沿って、議員は活動するということになる。限られた人数で代表性を欠いている議員は自らの意思・政治信条・選好・利害などは全て押し殺して、「無色・無欲・恬淡」となる必要があるのである。人一倍、金銭欲・権力欲の多そうな議員には酷なことであるが、不充分な再現性のもとでの代表とはそういう振る舞いを求められるのである。
 すると、議員1人は何人くらいの住民の声を現実的に受け止めて、代表・代弁・取次ぎできるかという問題となる。議員1人当たりの取次ぎを求める住民数が、議員数を決めるのである。住民への相談に割ける総時間が議員数の必要性を決める。


⑴ 学術的には、漸変主義(incrementalism)又は減分主義(decrementalism)とか、経路依存性(path-dependency)といわれる。
⑵ 総務省政策統括官(統計基準担当)監修『統計実務基礎知識 平成20年度版』全国統計協会連合会(2008年)。
⑶ 最大の東京都議会総定数でも127人である。
⑷ いわゆる無作為抽出の陪審員・裁判員は、代表性という点では非常に危ないということになる。陪審員は12人が基本である。日本の裁判員裁判の場合、基本は、裁判員は6人で、3人の裁判官と審理する。また、無作為抽出方式の「市民討議会」も、1,000人規模で開催することは管見の限り実践されていないので、統計的代表性という観点からは、同様に限界がある。
⑸ 「命令委任」ではなく「代表委任」と呼ばれる。つまり、受任者である議員は、個々の意思決定に際して、委任者である住民から逐一指令を受けることがないのである。そもそも、秘密投票であるから、誰が誰に委任したのかさえ不明である。
⑹ 例えば、後述のように、世代によって利害・意見が異なると前提すれば、住民の世代構成と議員の世代構成は相似していなければ、議員は住民を社会学的に代表できないことになる。住民をいかなるセグメントに分けるべきかという、マーケティングの問題なのであるとともに、社会的亀裂が何なのかを形成する、政治的に民意を反映して決定されるべき、対立軸・争点構築の問題でもある。
⑺ 知事は30歳、市区町村長は25歳以上である。つまり、知事は20代ではなり得ない。
⑻ 例えば、子育て、食の安全、ごみ・リサイクル、介護などは女性が関心を持つテーマといわれるが、逆にいえば、それ自体が、社会的な性的役割分担・差別を前提にしていたりもする。また、「女性性をアピールする」という男性に〈媚びる〉タイプの「女性特有の利害」であるならば、〈媚びる女性〉と〈媚びられる男性〉の連合陣営と、〈媚びない女性〉や〈媚びられ(たく)ない男性〉との対立が生じ、さらには、女性内での利害対立につながることもある。〈女性活用〉や〈女性の参画〉が、前者の連合陣営にからめとられる危険は常にある。
⑼ 例えば、女性経営者が「女性は、結婚・出産・育児があるので雇いたくない」などと発言するようなものである。男性経営者の場合、セクハラになるので、本音はともかく、発言を控えることが多く、女性の「特権」を生かして、「男性」的見解を公にできるわけである。
⑽ 日本の場合、外国人地方参政権を制度的に認めていないので、そもそも、在日韓国人・朝鮮人・華僑、日系ブラジル人、その他ニューカマーなどは、制度的に代表し得ないようになっている。しかし、日本国籍に限定しても、出身地別、被差別部落、アイヌなどの観点はありうる。
⑾ 例えば、議員の男女比をあらかじめ50%ずつ、又は、少なくとも40%以上とするようなものである。このためには、男性選挙区、女性選挙区と分けて同定数を配分してしまえば、制度的には簡単である。

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