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2015.03.10 議会改革

議員定数と代表性

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選挙的代表性

 統計的代表性を持たなくても、有権者住民が自らに近い候補者を、自由意思で選択するのが投票・選挙である。選挙的代表性とは、有権者自身と候補者の何らかの同一性・一体性を探すことである。もっとも、秘密投票制であるから、有権者が何を基準に、候補者が自身を代表できると考えるかは、住民一般にとっても、当選した候補者にとっても、不明である。したがって、当選後の議員が何を代表しているのかも、全く議員自身の裁量的な忖度に存する
 有権者と候補者の同一性の基準例としては、例えば、政党支持、選挙公約、地縁、血縁などがある。市町村選挙の場合、無所属が多いので、政党はあまり役に立たない。そもそも、近年日本の政党は政策的には節操がない(よく言えば、柔軟である)ことが多いので、政党では政見が分からない。それゆえ、日本の有権者は「支持政党なし」が多い。選挙公約も、「○○反対」というように、公約が非常に明白であれば分かりやすいが、多くの場合、公約は、候補者間で似ているか、曖昧か、総花的である。これを解消しようというのが「マニフェスト論」であるが、マニフェストを反故にするなど日常茶飯事である。地縁は、地域の意見を代弁してくれるという「想像の共同体」である。血縁とは、血縁があれば代表してもらえるという「血は水よりも濃い」という思い込みである。
 加えて、基準間の優劣と整合も厄介である。例えば、仮に地縁で議員を投票で選出しても、地縁以外の基準での同一性は持ち得ない。地元・地域という観点では代弁してくれても、他の観点では、住民の期待とは反対の行動をする可能性はある。親戚・一族・「○○家」という血縁でも、「骨肉の争い」もあるように、「血は水より濃すぎる」こともある。また、公約に掲げたこと以外のテーマが当選後に登場することもある。選挙的代表性では、議員の意思は常に投票者=住民の思いとは乖離する可能性があるのである。

社会学的代表性

 有権者と当選議員の主観的・内面的な思いに依存する選挙的代表性は当てにならないとすれば、住民構成と議員構成は、社会学的な客観的・外形的基準に従って、基本的に相似すべきという見解も出てくる。つまり、議員構成と住民構成が、相似することが代表性に必要と考える。この前提として、同じような属性の住民は、同じような利害又は意見を持つだろう、という、それ自体は先験的には根拠としにくい発想がある。そこで、いかなる基準で相似すべきかについては、実証研究されるべき問題であるとともに、価値判断の問題でもある。
 基準例にはいろいろあり得る。例えば、地域別代表がある。合併旧町村単位で見て、人口比率と議員比率が同じでなければ、特定の地域が過剰代表されることになって、住民構成と一致しない。この場合には、選挙区に分割し、選挙区間の定数を人口比例に割り振れば解決する。
 年金・医療・介護などの社会保障が問題になると、世代間対立が浮上する。こうすると、年齢別の代表性が問題となる。一般に、自治体議員構成は、20代はほとんどなく、30代、40代は少なく、50代、60代が過剰代表されている。もっとも、そもそも未成年者は代表され得ないし、自治体議員の被選挙権は25歳であるから、20代は最初から過少代表となる設計である
 日本の場合、性別も深刻である。住民者の約半分は女性であるが、女性議員ははるかに小さい比率である。女性が議員に少なければ、女性の視点・利害・選好は議会に反映しにくいことになる。もっとも、女性特有の利害とは何か、仮に女性特有の利害があるとして男性議員はそれを代弁し得ないか、逆に、女性議員が女性特有の利害を代表するのか、むしろ、男性以上に「男性的」な見解を持つことはないのか、性別は男女2つだけでよいのか、など論点は多々ある。
 職業別も大きな問題である。かつては農業が過剰であったが、その後は建設業・自営業が増え、最近は福祉業や退職後高齢世代無職者が増えている。いずれにせよ、サラリーマン(民間企業被用者)が少ない。ましてや、パート女性やワーキングプアの代表は、ほとんどいない。たまに、就職活動の成れの果てで、「若さ」を売りに、ワーキングプア的世代が議員になることが散見される程度である。そもそも、行政職員というサラリーマンは、立候補・兼業が禁止されている。
 また、職業を見る場合には、現在の職業と、かつての職歴、の双方が大事になってくる。前者の場合には、現在の職業の利害の代弁者である。例えば、土建業を職業とする議員が土建事業の拡大を求め、商店主議員が商店街振興を求めうる。後者は、職歴に基づく知識・見解の活用が期待されるが、歪みもありうる。例えば、民間サラリーマンは、定年退職後の年金生活者として議員になることはありうる。企業年金と退職金と資産で生活の安泰な議員は、福祉サービスに頼る必要も少なく、「民間経営」の論理や優位性の信念と、年長者の権威と行政・公共部門への偏見を振りかざし、行革・リストラを強硬に主張するかもしれない。
 社会学的代表性は、議員が住民構成を映す鏡なのかを試す指標を必要とする。上記以外にも、所得・資産階層や家柄などもある。欧米諸国では人種・民族的マイノリティの代表性が強く問題視される。住民と議員の構成があまりに乖離している場合には、代表性への信頼を下げる。しかし、こうした基準が、利害や見解に直結する保証はない。そのため、割当制によって制度的に担保することも、必ずしも妥当とはいえない。

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