2015.03.10 議会運営
第40回 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律改正に関する取扱い
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律改正に関する取扱い
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律が改正され、教育委員会に教育長が新たに設けられたが、どのようなものであるのか。
(1)地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律の改正趣旨と概要
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律が先の第186回通常国会において改正され、平成26年6月20日に公布、平成27年4月1日より施行されることとなった。
この法律の改正趣旨は、教育の政治的中立性、継続性・安定性を確保しつつ、地方教育行政における責任の明確化、迅速な危機管理体制の構築、首長との連携の強化を図るとともに、地方に対する国の関与の見直しを図るため、地方教育行政制度の改革を行うことを目的としている。
そしてその概要は、①教育行政の責任の明確化、②総合教育会議の設置、大綱の策定、③国の地方公共団体への関与の見直しが柱となっている。
①については、改正後の地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「法」という)4条1項により、教育委員長と教育長を一本化した新たな責任者として教育長を置くこととされている。
【法4条】
① 教育長は、当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者で、人格が高潔で、教育行政に関し識見を有するもののうちから、地方公共団体の長が、議会の同意を得て、任命する。
なお、教育長は、首長が議会同意を得て、直接任命・罷免を行い、教育委員会の会務を総理し、教育委員会を代表することとされた。また、教育長の任期は3年とすることとされ、教育委員会の委員の任期は4年となった。
それ以外としては、(ⅰ)教育委員から教育長に対し教育委員会会議の招集を求めることができること、(ⅱ)教育長は、委任された事務の執行状況を教育委員会に報告することとされている。
②については、(ⅰ)首長は、総合教育会議を設ける。会議は、首長が招集し、首長、教育委員会により構成されること。(ⅱ)首長は、総合教育会議において、教育委員会と協議し、教育基本法17条に規定する基本的な方針を参酌して、教育の振興に関する施策の大綱を策定すること。(ⅲ)会議では、大綱の策定、教育条件の整備等重点的に講ずべき施策、緊急の場合に講ずべき措置について協議・調整を行う。調整された事項については、構成員は調整の結果を尊重しなければならないこととされた。
③については、いじめによる自殺の防止等、児童生徒等の生命又は身体への被害の拡大又は発生を防止する緊急の必要がある場合に、文部科学大臣が教育委員会に対して指示ができることを明確化するため、法50条(是正の指示)を見直すこととされた。
なお、その他として、(ⅰ)総合教育会議及び教育委員会の会議の議事録を作成し、公表するよう、努めなければならないこと、(ⅱ)現在の教育長は、委員としての任期満了まで従前の例により在職することとされた。
(2)標準市議会委員会条例における改正について
① 改正趣旨
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律が改正されたことに伴い、地方自治法121条(長及び委員長等の出席義務)が改正されたため、標準市議会委員会条例(以下「委員会条例」という)21条中「教育委員会の委員長」を「教育委員会の教育長」に改める必要がある。
なお、委員会条例21条中の「法令又は条例に基づく」を平成11年の地方自治法改正に併せ「法律に基づく」に改めている。
② 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律の附則に係る留意事項
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律の附則には、現在の教育長と教育委員会の委員長の任期についての経過措置が規定されているため、現在の教育長と教育委員会の委員長の任期満了日が施行日以降の場合は、委員会条例にも経過措置を設けることが必要である。
③ 委員会条例改正に係る留意事項
委員会条例改正に当たっては、その提案権が行政実例(以下「行実」という)昭和22.8.8のとおり議員に専属していると考えられることから、議員又は委員会提案による委員会条例改正案により改正するのが適当であると考えられる。
○常任委員会に関する条例の発案権及びその公布(行実昭和22.8.8)
問 常任委員会に関する条例の発案権は議員専属であるか、第96条第1号により執行機関においても発案できるか、また、この条例の公布は、執行機関がすべきものと思料するがどうか。
答 前段、執行機関は発案できない。後段はお見込のとおり。
次に、委員会条例21条中の「法令又は条例に基づく」を平成11年の地方自治法改正に併せ「法律に基づく」に今回の委員会条例改正に併せて改めたのは、昭和25年に地方公務員法が施行され、人事委員会又は公平委員会を条例で設置することが義務付けられたため、条例に基づく委員会の規定を設ける必要性があった。しかし、昭和27年に地方自治法が改正され、同法138条の4が新設され、執行機関は法律の定めるところにより設置することとされたため、空文化することとなってしまったが、その際の地方自治法改正で整理されずに残されてしまっていた。それが平成11年の地方分権一括法により整理がなされたが、委員会条例の改正をその時点で行わなかったため、今回地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部が改正されるに当たり、委員会条例21条を改正する必要が生じ、併せて改正したものである。
(3)委員会条例改正案及び新旧対照表
委員会条例改正案と新旧対照表は次のとおりであるので参考としていただきたい。
【委員会条例改正案例】
○○市議会委員会条例の一部を改正する条例
○○市議会委員会条例(昭和○○年○○市条例第○号)の一部を次のように改正する。
第21条中「教育委員会の委員長」を「教育委員会の教育長」に、「法令又は条例に基づく」を「法律に基づく」に改める。
附 則
第1条 この条例は、平成27年4月1日から施行する。
第2条 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第76号)附則第2条第1項の場合においては、この条例による改正後の第21条の規定は適用せず、この条例による改正前の第21条の規定は、なおその効力を有する。
新 | 旧 |
(出席説明の要求) 第21条 委員会は、審査又は調査のため、市長、教育委員会の教育長、選挙管理委員会の委員長、公平委員会の委員長、農業委員会の会長及び監査委員その他法律に基づく委員会の代表者又は委員並びにその委任又は嘱託を受けた者に対し、説明のため出席を求めようとするときは、議長を経てしなければならない。 |
(出席説明の要求) 第21条 委員会は、審査又は調査のため、市長、教育委員会の委員長、選挙管理委員会の委員長、公平委員会の委員長、農業委員会の会長及び監査委員その他法令又は条例に基づく委員会の代表者又は委員並びにその委任又は嘱託を受けた者に対し、説明のため出席を求めようとするときは、議長を経てしなければならない。 |