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2015.01.10 議会改革

【特別講義】議会改革の課題とこれから~機関としての議会の戦術、戦略を持て~

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議会という舞台を仕掛け、盛り上げる

廣瀬 そうはいうものの、穴を塞ぐだけではどうしようもないという場合もあります。その場合にはやっぱり対案を示すということ。4年の任期の間に1本や2本はそういう対案がないと議会の花が足りない、というような気持ちを持っていただいてもいいのかなと思います。
 また、より戦略的な議会ならば、行政がそれほど積極的ではないのだけれども、住民からすると「これは欲しい。必要だ」というような政策を積極的に議会側から仕掛けていく。財政的な負担が過重にならず、議会の中でも調整がつきやすい課題をうまく選び、狙いすまして議会主導で政策化する。こういう感覚が広がってくると、そうした課題を積極的に探すという習慣が、委員会などでもできてきます。「うちの常任委員会は、この4年間まだ議員(委員会)提案条例がない。これは何とかしないと」と、そういう問題意識を持って委員会運営をする委員長さんも出てくる。
 これを単なるパフォーマンスとして受け止められてしまうと、「それは議会の本筋か」と叱られるかもしれませんが、生身の人間が人様の前で議論をして物事を決めていく、議会はその舞台なのですから、やはりそこにはある種の演出というか、感情の動きというものも、決して馬鹿にしてはいけないのだと思います。
 英国議会では、持っている書類をばらまくというシチュエーションがあります。議会の長い歴史と伝統の中で、どういうときにどんなアクションが起こって、長時間の議論にどうメリハリをつけ、ここぞというときに盛り上がって集中するかというような演出効果も含め、議会を動かしていくわけです。そういうことは決して馬鹿にすべきことではない。その意味でいうと、私はヤジの絶対否定論者ではありませんが、しかしヤジよりは議会の公式の議論の中で、ちゃんと盛り上がれるようにやっていただきたいとも思います。

集約・調整・決着の力

廣瀬 議会としての覚悟がまだ希薄だなと思うことが、「決着」をつける場面で見られます。
 例えば、学校統廃合に係る事業の予算が上がってきたとき、「調整はついていますか? 地元の住民の方に納得していただいているんですか?」というような質疑はしばしば耳にするように思います。「ちゃんと調整をしたか」、「地域間の合意をつくったか」、「この決着で構わない。やむを得ない。そういう納得感が住民にあるか」と。
 もちろん、それを確認して最終的にゴーサインを出せるか、出せないかを判断し意思決定をしたい、ということは大変よく分かるわけですが、単に行政にそれを求めて、行政がやっていたということが確認できればゴーサインで、やっていなければ破棄差戻し、やり直しといっていれば議会の役目はすむのでしょうか。それに対して私は疑問があるように思うのです。
 もちろん行政もそういう努力をしてもらわなくてはいけません。でも、なぜ議会にはいろいろな地域から選出された議員が何人もいるのか。それぞれの地域的な、あるいは年代的な、性別や職業的背景による様々な物の見方を持った人が、何人も集まっているのか。多様な利害や多様な物の考え方をそこに出し合って、議論をして調整して決着をするために最適な場が議会です。一人ひとりの議員が、それぞれ選挙で選ばれたという正当性の根拠を持って、その場に座っていらっしゃるということが、そこでこそ多様な意見の調整と決着をつけるべき場としてふさわしい、そこでしか決着はつけられない場だからこそ、合議体としての議会があるわけです。
 もちろん行政は立案するプロセスで最大限調整をすべきでしょう。住民の納得、合意を得るために努力を尽くさなくてはいけないでしょう。でも最後の納得と決着、そして場合によっては再度議場でもんだ上で、違う結論を出すという選択肢を含めて「決着をつけること」は、議会にのみ許された、そして議会だけができる役割なのではないでしょうか。
 京都府の北部の京丹後市は6町の対等合併でできた市ですが、学校統廃合計画を議会の議決事件にされ、行政の提案と少し違う結論を出されました。そのプロセスでは、約半年にわたって特別委員会を毎週のように開き、その中の何回かは該当する校区に出かけていって、PTAの皆さんと意見交換もされ、ある校区では保護者の皆さんが常任委員会室の傍聴席を埋め尽くすような緊迫する場面も何度か行われた上で、最終的に修正議決をされました。その修正議決の直前には、教育長から「議決をされ、議会で方向性を示していただいたら、教育委員会は真摯に受け止め、きちんと対応を考えていきたい」という答弁がなされています。
 そこまでの半年間にわたる毎週の特別委員会の中で、地域間の合意形成も議会が自らの責任として背負う。その上で京丹後市議会では決着をつけられたわけです。
 そうした難しい場面で、行政、市民、専門家、当事者などからの多様な情報、政策意思を引き出し、集約、調整する場としての役割というものが、これからの議会には必要とされている、求められているということなのではないかと思うのです。

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