2015.01.10 議会改革
議員の民間企業からの隔離
はじめに
金銭欲と権力欲に、平均的住民よりも横溢するであろうと推測される政治家は、平均的住民から見れば、悪行をしかねないことが推論される。政治家の一員である自治体議会議員も同様である。簡単にいえば、金銭を利用して議員という地位を得て権力欲を満足させようとし、また、議員という地位に基づく権力を利用して蓄財を図るという金銭欲を満足させようとする、かもしれない。金銭と権力の好循環は、政治家稼業のビジネス・モデルとしては結構なことであろう。しかし、住民は、政治家に、金銭欲を満たすために議員の地位を信託するわけでもなければ、金権で議員の地位を獲得することを期待しているわけではない。
同様に、平均的住民にも金銭欲と権力欲がある。様々な財・サービスを享受するという意味での欲求もあり、役務欲といってもよい。また、市井の平均的住民は為政権力を持っていないが、自らの意に沿う為政者を擁立し、あるいは、為政者に自らの望む方向での施策を決定させることを望むことは、権力欲の現れである。これを綺麗に表現すれば、住民は役務提供を受ける権利を有し、参政する権利を有する、ということになる。
政治倫理とは、為政者及び住民の双方に渦巻く、こうした各種の欲望の業火を、どのように適正化して制御するかという問題なのである。住民が政治家に一方的に求めるだけの規律ではないし、議会内自律のような政治家だけの内輪の取決めという問題ではない。
民間企業からの隔離
もっとも単純には、政治家である自治体議員は、議員という地位を利用して、金銭欲・物欲・役務欲という、自己の私利私欲を図ることが、当然に想定されるだろう。そこで、現行法制では、議員の民間企業からの隔離が採用されている。議員は、当該自治体に対して請負をする者、又は、その差配者(支配人、法人取締役・監査役など)になることができないとされている(地方自治法92条の2、以下では、「請負差配者」と一括して略記する)。
請負者は、自治体から受注を受けることで、利潤を獲得するのが普通であるから、金銭欲を満たす。発注者である自治体が請負の受注者を決めるということは、申し出てきた多数の民間企業などの間で、どの企業に利益を配分するかを決めるということである。請負先の決定は、副次的には、自治体による便宜供与なのである。自治体の意思決定者は、企業間での有利不利を左右する立場にある。その決定は公正でなければならない。自治体の意思決定機関である議会の一員が、自ら請負差配者として、自らに便宜供与を求めることは、自分で自分に利益を誘導することである。一種の利益相反である。したがって、このような事態は望ましくない。常識的には首肯できる規制であるといえよう。