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2014.11.10 議会運営

第38回 委員長である委員の辞任の手続について/除斥すべきものを除斥せずに行った議決の効力

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委員長である委員の辞任の手続について

QA常任委員会委員長であるBが当該委員会委員を辞任することとなった。この場合、A常任委員会委員長の辞職の申出をした後に、委員の辞職願を提出する必要があるのか。

A委員会の委員の選任・辞任については地方自治法(以下「法」という)109条9項で条例で定めることとされていることから、標準市議会委員会条例8条で委員の選任については議長の指名によることとし、委員の辞任については標準市議会委員会条例14条において議長の許可によることと規定されている。

【法109条】
⑨ 前各項に定めるもののほか、委員の選任その他委員会に関し必要な事項は、条例で定める。

【標準市議会委員会条例8条】
① 常任委員、議会運営委員及び特別委員(以下「委員」という。)の選任は、議長の指名による。

【標準市議会委員会条例14条】
 委員が辞任しようとするときは、議長の許可を得なければならない。

 次に、委員長の選任・辞任についても法109条9項に基づき条例で定めることとなるため、標準市議会委員会条例9条に基づき委員長の選任を委員による互選により行い、委員長の辞任については標準市議会委員会条例13条により委員会の許可を得る必要があることとしている。

【標準市議会委員会条例9条】
① 常任委員会、議会運営委員会及び特別委員会(以下「委員会」という。)に委員長及び副委員長1人を置く。
② 委員長及び副委員長は、委員会において互選する。

【標準市議会委員会条例13条】
 委員長及び副委員長が辞任しようとするときは、委員会の許可を得なければならない。

 本問では、A常任委員会委員長であるBが委員を辞任するには、まず委員長を辞職する旨の申出を行い、委員会で許可された後に委員を辞職する旨の申出を行い、議長の許可を得るという2段階の手続が必要であるか疑義を生じる。
 確かに、委員長の辞職を委員会で許可し、委員の辞職を議長の許可により行うことは委員会条例に規定した手続を順を追って行っているから法的には問題ないといえる。しかし、この2段階の手続をとらなければ委員長が委員を辞任できないことはない。なぜなら、委員長は委員の身分の上に立脚していることから、基礎たる委員の身分が失われれば当然委員の身分の上に立脚している委員長の身分も辞職したものとみなされるからである。
 これは例えば議長が議員を辞職した場合には議長を続けることができないことと同じである。
 それゆえ、議事手続の効率化の観点からも委員辞任の申出をして議長が許可することにより委員長も辞したものとみなされ、次の委員会において委員長が欠員であることから委員会において委員長互選の手続をする必要があると解される。

除斥すべきものを除斥せずに行った議決の効力

QA議員が取締役を務める法人と当該地方公共団体が請負に係る仮契約を締結し、それに伴って長より契約議案が議会に提出された。当然、議会の審議において法117条の規定に基づきA議員を除斥して審議を進めるべきものであったにもかかわらず、除斥をせずに当該契約議案について採決を行ってしまった。この場合、当該議会の議決は有効であるのか。

A 除斥の制度は、議員の立場が公的な者であることに鑑み、議員の一身上に関する事件又は議員に直接的な利害関係のある事件に関しては、公正な判断を下し難いこと、また、公正な判断を下したとしても、誤解を招くおそれがあることから当該議員を議案審議に参与させずに、他の議員の判断に委ねることが適正であるという趣旨から法117条に規定されたものである。

【法117条】
 普通地方公共団体の議会の議長及び議員は、自己若しくは父母、祖父母、配偶者、子、孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件又は自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件については、その議事に参与することができない。但し、議会の同意があつたときは、会議に出席し、発言することができる。

 ここで法117条の除斥の対象となるのは、議長及び議員である。それゆえ、例えば長に対する問責決議案の審議の際も、法117条に基づき長を除斥させることはできない。ただし、一般的には法117条の趣旨を鑑みて、執行部といえども自主的に議場から退席し、除斥と同様の効果を生じさせることとする例が多い。
 次に、除斥が議会の審議において適用される場合は、①自己若しくは父母、祖父母、配偶者、子、孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件、②自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件の2つの場合である。
 まず、①の一身上に関する事件とは、当該個人にのみ直接的かつ具体的な利害関係を有する事件をいい、法126条における議員の辞職の場合や法127条における議員の資格決定、法134条における議員の懲罰等が挙げられる。
 ②の自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件とは、報酬を得て従事する職務だけに限られるものでなく、名誉職であっても、社会生活上の地位に基づいて継続的に行う業務又は事業であって、その上、従事する業務と利害が直接的であることが必要であり、利害が間接的又は反射的なものでないものの事件をいう。
 さて、本問におけるとおり、除斥該当議員が存在するにもかかわらず、当該議員を除斥せずに審議を行い議会において議決した場合の議決の効力については問題がある。確かに、除斥すべきものを除斥せずに審議し議決をしたことから、その議決全体が何らの手続を得ることなく当然無効となるとする考えがある。
 しかし、行政実例昭和25.10.3のとおり、除斥されるべき者が議事に参与してした議決が満場一致で可決された場合の議決の効力については、当然には無効とはならないと解すべきである。ただし、法117条に反した違法な議決であるから、法176条4項の規定に基づき、長が当該議決を再議に付すべきであるとされている。
 再議に付したことによりそれまでの審議が白紙に戻ることから、再度除斥に該当する議員を除斥した上で、議決をやり直す必要があるといえる。

○除斥されるべき者が加わってなされた議決の効力(行実昭和25.10.3)
問 除斥されるべき者が議事に参与してした議決が満場一致で可決された場合の議決の効力について。
答 当然には無効とならないと解されるが、違法な議決であるから第176条第4項の規定により長において措置すべきである。

 ところで、法117条における除斥に該当しないにもかかわらず、除斥をして行った議決については、除斥該当議員が加わってなされた議決と同様に違法な議決として法176条4項の規定により、長による再議の措置をとる必要があると解する。
 どちらにしてもその審議に違法な瑕疵が存在しているのであるから、適法な議決に戻す措置をとる必要があるといえる。

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