2014.01.20 議員活動
質問力を上げよう 第1回 残念な質問、もったいない質問をなくそう
なぜ、一般質問なのか?
── 一般質問の機能と可能性
一般質問は、「市政に関わる全てのこと」について、執行機関が持つ課題の現状などについての情報、事務執行の状況、方針、認識を質すことができる。そのため、一般質問は、執行機関に対し、①監査機能、②政策提案機能を持ちうるのである。具体的には、以下のように整理できよう。
① 監査機能(監査質問)…自治体の運営について、あるいは事業の執行について、執行機関がなすべきことを適切になしているかをチェックする機能(質問)
② 政策提案機能(政策提案質問)…政策(とその具体化である施策・事業)について、効果の検証や手法の評価・提案、取り上げられるべき政策課題などを提起する機能(質問)
市民の多様性を反映する多様な議員が、それぞれの視角から、市民の代わりにこうした機能を一般質問を通じて果たせば、「市民の議会」による執行機関に対する緊張と制御の手段のひとつとして、一般質問が二元代表制の中で重要な意味を持つことは明らかであろう。
また、一般質問は、議員1人で行うことができる。このことは一般質問がそもそも持つ弱点でもある。だが、自らの一般質問でこれら2つの機能をよく発揮することは、「1人でも始められる議会改革」なのである。自身の議会に議会基本条例制定の声が上がっていなくても、議会改革の波が遠くても、一般質問によって、議会が執行機関に対峙して持つ①監査機能と②政策提案機能を果たしうるのである。
また、ヒロバとして公開される議場での発言であるなら、それは市民に対する喚起や周知の機会でもあり、「議事録として残る」ということにも意味がある。執行機関内部の意思決定は常に明らかではない。政策判断や所信を問い、それが執行機関の意思として明らかにされ記録に残されること自体が重要である。
一般質問の現状
──「八百長と学芸会」
だが、残念ながら、そうした一般質問が持つ機能は十分に発揮されているとはいえない。「八百長と学芸会」は、質問内容とその答弁、再質問も事前にすり合わせて、当日はその「シナリオ」を読み合わせるという実態を片山善博氏が評した言葉⑶だが、質問内容も自治体職員に「外注」していて、1人の職員が質問も答弁も書く「マッチポンプ」な質問があるとか、おそらくそのため職員が書いた文章を議場で最初から最後つまり答弁部分まで読んでしまったという「事故」があったとかいった話を時折耳にする。そこまではいかずとも、一度も一般質問した姿を見たことがない長期在職議員は多くの自治体にいるらしい。もちろん、一般質問は義務ではなく、それだけで即資質が問われるわけでもないのだが。
「八百長と学芸会」に代表される喜劇的な図には、しかし、一般質問の機能や手法を学ぶ機会もなかったという背景もある。会派の先輩議員が教えてくれたり勉強会をしてくれたりした経験のある議員は少数で、多くが手探りで、その議会で行われている一般質問を見本とすることになる。都道府県議会や政令市であればともかく、そうではない基礎自治体の議会には調査や作成を支援するスタッフもほとんどおらず、議員は1人で情報収集から文章作成までこなしている。確かに一般質問は現在、①監査機能、②政策提案機能のどちらも十分に発揮していない。その状況に議会はもちろん責任があるが、執行機関にとっても、力や機能を十全に発揮しない「御しやすい議会」や「マッチポンプ」な質問はむしろ都合が良く、相互依存の関係があったのではないかと見ることもできる。条例づくりの審議会で、執行機関側が議会の反応、往々にして議会の特定の声の反応をどれほど意識しているか、感じることはよくある。
そうした「事情」を斟酌するとしても、一般質問の活性化は課題である。議会改革についての認知は急速に高まったが、一般質問の質問力についての認知は気づきが始まった段階である。その果たしうる機能から見れば、もっと重要なものとして着目されていてもいいはずなのに、そうなってはいない。それには、残念ながら、現状、実際の議会で一般質問が生きていない「実績」があるからだろう。