2026.10.13 New!
子育て施策の現在地──法律・条例・議会質問から読み解く
関東学院大学法学部地域創生学科教授 牧瀬 稔
1 本特集の趣旨
読者は覚えているだろうか。「異次元の少子化対策」(次元の異なる少子化対策)というフレーズを……。
しかし、少子化が急速に進展している。少なくない自治体が「子育てしやすいまち」を掲げ、子育て支援施策の充実に力を注いでいる。医療費助成や給食費の無償化、保育環境の充実など、自治体独自の取組は年々広がり、いまや「子育て」は中核を担う政策分野の一つとなっている(なお、「少子化は2026年度に下げ止まった」という一部報道もある)。
同時に、自治体間で子育て施策の横並び化が進んでいる。しばしば見られる「他自治体が実施しているから、我が自治体も実施する」という発想だけでは、地域が抱える課題の解決には必ずしもつながらない。
以上を背景に、本特集を進めることにする。
本特集では、まず子育て施策に関する全国的な動向を俯瞰(ふかん)する(第1回)。その上で、地方都市でありながら特色ある子育て施策を展開し、定住人口の増加や市民満足度の向上などの成果につなげている鳴門市(徳島県)の実践に着目する。鳴門市の事例は、自治体総合フェアにおける泉市長の講演がベースとなっている。成果が上がる子育て施策のポイントを紹介したい(第2回・第3回予定)。
さらに、本特集では、子育て施策を推進する上で見落としてはならない視点も取り上げる。とりわけ重要なのが「地域特性」である。地域特性を踏まえずに子育て施策を導入すれば、期待した成果につながらない可能性もある(第4回予定)。
子育て施策を検討・実施する際に留意すべき論点や政策的視座を整理し、施策を一過性の取組で終わらせず、成果につなげ、成功の軌道に乗せるためのポイントも言及する(第5回予定)。
本特集の目的は、先進事例を単に紹介することではない。成果を生み出した背景や、政策形成の考え方を分析する。それぞれの自治体が自らの地域特性に応じて政策を発展させるための示唆を提示したい。
主な読者として想定しているのは、地方議員である。議会質問で「他自治体では、このような取組をしています」と紹介するだけでは、首長部局は聞き流すだけであり、政策は動かない。重要なのは、多くの事例から成功の条件を読み取り、「我が自治体では、なぜ必要なのか」、「導入するなら、どのような形が適しているのか」、「成果を何によって検証するのか」まで踏み込んで問うことが求められる。
すでに子育て施策に取り組んでいる自治体にとっても、本特集が、既存施策を改めて点検し、「実施する子育て施策」から「成果の上がる子育て施策」へと進化・深化させる契機となれば幸いである。
なお、冒頭に紹介した「異次元の少子化対策」とは、国が少子化の進行を受け、子育て施策をより大きな規模で強化する方針を意味していた。2023年12月に、国は「こども未来戦略」を決定し、総額3.6兆円規模の「加速化プラン」を掲げた。主な施策は、児童手当の拡充、こども誰でも通園制度の導入、育児休業給付の充実などであった。
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