元所沢市議会議員 木田 弥
前回は、各常任委員会所管事務等活動報告一覧表を活用することで、委員会活動の進捗管理を見える化した事例を紹介しました。皆さんの議会の委員会活動活性化に少しは役立ちそうでしょうか？
今回は、議長でしかできなかったとまではいえないけれど、議長だからこそ迅速に実現できたことをいくつか紹介します。
早稲田大学との連携協定締結
所沢市は都の西北に位置していることもあり、1987年に早稲田大学創立100周年事業の一環として所沢キャンパスが設置されました。現在は、早稲田大学の人間科学部とスポーツ科学部が本拠を置いています。
私が議長在任当時、所沢市議会には早稲田大学出身議員が３人いました。３人のうち私と同じ会派に所属するＡ議員から、私が議長就任直後から「早稲田大学との連携協定を締結しましょう」と熱心に提案をいただきました。
今では先進的な地方議会の標準装備ともなりつつある大学と議会との連携協定締結ですが、私が議長だった2016年当時はそれほど実例もありませんでした。所沢市議会の連携協定が実績として掲載されている2017年の全国市議会議長会「市議会の活動に関する実態調査結果」によれば、議会と大学とが連携協定を締結している市は18市（全814市中の2.2％）。所沢市と同規模の人口30万〜40万人の市では、所沢市を含めてわずか２市でした。埼玉県内では、さいたま市議会が埼玉大学との連携協定を2008年に締結しているだけでした。2024年には、全815市のうち43市、全体の5.3％の市が連携協定を締結しています。人口30万～40万人の市では５市と、それぞれこの７年で倍増しています。
Ａ議員は、所沢キャンパスの早稲田大学関係者とも様々な交流をされていました。今回の連携協定のアイデアも、Ａ議員が「2015年６月に所沢稲門会（早稲田大学出身者の会）に出席した際、当時早稲田大学人間科学学術院長に滋賀県大津市議会の大学との連携協定の事例（立命館大学、同志社大学、龍谷大学と連携）をお話ししたところ、興味を持っていただき、快く相談に乗ってくださった」（Ａ議員のブログより）ことから始まりました。
また、Ａ議員は、所沢キャンパスが立地する地区を地盤とする議員でした。そのため、特に当時の議長であった私が介在しなくても、Ａ議員が主導して締結に向けた活動を進めるという選択肢もありました。しかし、所沢キャンパスが立地する地区の地元議員がほかにもいたことから、誰が連携を主導するかの手柄争いに発展する可能性がありました。“議会あるある”ですが、連携を自分の手柄にできなければ、むしろ連携を妨害される可能性もあります。何事においても、議会では、新しい取組みをつくるよりも壊す方が簡単ですから。
そういった事情もあり、議長である私に働きかけてくださったようでした。Ａ議員の指導を仰ぎながら、連携協定締結に向けて議長と議会事務局が主導して準備を進めることにしました。
議会事務局長も参加しての、幾度かの大学事務局との打ち合わせを経て、改めて所沢キャンパスの人間科学学術院とスポーツ科学学術院の院長に正式に面会し、連携を申し入れました。最終的には、早稲田大学本体と所沢市議会との連携協定となりました。そのため、調印の相手方は早稲田大学総長となりました。
こうして2016年２月１日に、所沢市議会と早稲田大学とのパートナーシップ協定締結式が行われました。締結式には、Ａ議員が目立ちすぎないように、Ａ議員と地盤を同じくする議員にもしっかりと参加していただきました。
一方で、私の旧知で地元活動でお世話になっている早稲田大学のＢ教授からは、物言いがつきました。話をお聞きすると、どうも所沢市議会との連携には肯定的ではないようです。私が、今回の連携話をＢ教授には全く通さずに進めていたことがどうやら不満のようでした。議員については細心の注意を払ったのですが、さすがにそこまで配慮する余裕はありませんでした。
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