元所沢市議会議員 木田 弥
先日、SNSを開いたら、10年前の思い出という項目で、議長就任時に議長室で撮影した写真がいきなり表示され、一瞬ぎょっとしました。
この連載では、主に1期目の、どちらかといえば、首長に対しては是々非々の立場に立つことを目指している議員の皆さんを念頭に、議会活動のこんなときどうする、をお伝えしてきました。さすがに1期目で議長になるという機会はそうそうないものと思われますので、今回のテーマは少し皆さんには縁遠い話になります。現に私が議長に選出されたのも、4期目の1年目のことでしたし、実際に一定程度議会活動の経験を積まずに議長になっても、議会運営はおぼつかないことでしょう。私も、10年以上の議会活動の経験があったからこそ、議長になって様々な制度等を提案でき、かつ実現にこぎ着けることができました。
何らかのはずみで、あるいは強いられて、1期生でありながら議長になることも場合によってはあるかもしれません。私の知っている事例では、ある小規模な市の議長に2期目のしかもいわゆる野党系の議員が選任されました。背景を探ると、その議員に対する嫌がらせのためにわざと選任したようです。そういう野蛮なケースも含めて、そうなったときのために、今回は私が議長になって進めたこと、そしてなぜそれを進めたかについて、現在でも議会で続けられていることを中心にお伝えしたいと思います。
議長の権限は想像以上
議長になって思い知らされたのは、誤解を恐れずにいえば、議会事務局は一義的には議長のために存在するという印象を抱いたことです。議員は日常的に事務局職員にいろいろとお世話になるわけですが、議員は事務局職員の上司ではありません。にもかかわらず、議員が勘違いをして威張り散らすケースもあります。あなたは私の上司ではないということをいちいち議員に伝えるのも面倒なので、事務局職員は仕方なく対応してくれていますが、議員には事務局職員に対する指揮命令権はないことを、この際しっかりと認識しておいてください。
似たような事例として、議員による行政調査権の権限の問題があります。議員個々には行政調査権はありません。行政調査権はあくまでも議会に与えられた権限であるにもかかわらず、あたかも議員個人にあると勘違いする事例です。
一方、議長には地方自治法104条(1)に基づく事務統理権、つまり指揮命令権が付与されています。ですから、もし事務局職員に議会活動に伴う定型的業務以外の業務をお願いする場合は、本来であれば議員が議長にお願いして実行してもらうというのが正式なルートです。
私が議長就任後に、事務局長に「この件について他市議会事例を調べておいてください」とお願いしたところ、たちどころに対応してくれました。その速さには本当に驚かされました。ヒラ議員時代には考えられなかったことです。これは私が偉いのではなく、法律の忠実な執行者たらんとする公務員の皆さんの基本的動作といってよいでしょう。1年でヒラ議員に戻った後は、当然、以前と同様のその他大勢議員の扱いとなりました。
(1) 地方自治法104条「普通地方公共団体の議会の議長は、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統理し、議会を代表する。」
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