2022年5月10日(火)、東村山市議会において、議員研修会「投票率向上のために私たちに出来ること」が開催された。
東村山市議会では昨年度より、「投票率の向上対策について」を調査事項とし、研究活動を行っている。地方議会改革、シチズンシップ教育等を専門とし、若者の投票率向上のための活動のアドバイザーとしても活動する佐藤淳氏(青森大学社会学部教授、早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員)を講師に迎え、投票率向上のための投票行動の分析や先進事例を学び、今後の取組について検討した会の様子をレポートする。
はじめに、東村山市議会政策総務委員会の伊藤真一委員長より、本研修会について、投票率はこの40年間で20ポイント以上下がっているという問題を深刻に受け止め、具体的解決策の提言を目指し、各議員、教育委員会、選挙管理委員会と課題意識を共有するため企画されたことが話された。
佐藤氏の講演では、まず、「投票率に影響を与えるもの」について、米の研究者ダウンズが提唱した期待効用モデルに基づき、投票に参加する要因は、大きく①自分の投票の重要性、②候補者間の期待効用差、③投票コスト(負担)、④選挙に参加する長期的利益の4つに分類できると説明し、それぞれの要因に対応する事例を紹介する形で進められた。
Zoomを通じてご講演される佐藤淳先生
また、これらの要因を縦軸に取り、それらの担い手について、マトリックス形式で整理した。インターネット投票など、法改正を要する対策はできずとも、自治体の裁量で可能な選挙公報のサイズの工夫やウェブサイトでの情報提供などの工夫が可能なことが説明された。
事例の紹介では、例えば、③市民の投票コストを下げることについて、商業施設に出張投票所を設けることで効果が見られたこと、しかし共通投票所にするためには投票データの消し込みが必要になり費用対効果を見る必要があることなど、具体的な効果と課題の分析がなされた。
特に重要であるのは④長期的利益につながる主権者教育であるとして、各地の高等学校、中学校における模擬選挙、模擬議会、模擬請願などの事例が紹介された。ポイントは、「本気で行うこと」として、選挙管理委員会が全面協力して入場券、投票券、立会人、期日前投票など、本物を追求した模擬選挙を経験した高校の生徒による直後の選挙での投票率が90%を超えたというエピソードが紹介された際には、会場から感嘆の声が上がっていた。
事例の紹介
他にも、模擬議会で出された良い提案に予算を付けた事例、可決された議案について実際の議会で調査研究を行い報告書を出した例、生徒たちが市に対して実際に請願を行い補助金が付いた例など、効果のある工夫について学びを得る内容であった。
参加者による質疑応答の様子
参加者は、自分たちは何ができるかを考え、活発な質疑を行い、佐藤氏からは、高等学校だけでなく、中学校へのアプローチも有効であるなどの助言がなされた。
また、子どもの頃に親に投票所に連れていかれるとその後の投票率が20ポイントも上がるというデータが示されると、次の参院選に向け早速呼びかけができないか、提案がなされた。本研修には教育委員会、選挙管理委員会の職員も参加しており、具体的な行動につながる取組みであると感じられた。
市議会では、今後も精力的に調査研究を進め、12月を目途に報告書を取りまとめ、来年の統一選の投票率向上に向けた対策を行うという。今後の動きが注目される。
土方桂市議会議長、村山じゅん子市議会副議長、
伊藤真一政策総務委員会委員長、下沢ゆきお政策総務委員会副委員長