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2020.06.25 議会改革

15回の節目を迎えるマニフェスト大賞

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毎日新聞論説委員 人羅 格

 地方議会・議員や首長、民間団体らによる改革や活動を顕彰するマニフェスト大賞が今年で15回目を迎える。
 2006年に第1回が実施され、前回の応募は2,619件に達するなど、国内最大規模の政策コンテストに成長した。地域主体の活動を競う場として、存在感を発揮している。
 6月2日、大賞の担い手となる実行委員会によるオンライン会議が開かれた。全国から地方議員40人が名を連ねており、所属議会の市区町村は北海道から沖縄県にまたがる。
 今年の実行委員長は白井亨東京都小金井市議が務める。新型コロナウイルス感染対策から、今年は例年と異なり「ズーム(Zoom)」で会議を重ねている。2日の会議は21議員が参加した。「東京で会議をするよりもオンラインの方が逆に参加率が高まり、課題も共有しやすくなった」と白井氏は語る。

「地方議会の甲子園」目指す

 マニフェスト大賞の受賞部門はローカルマニフェストの推進(地方議会、首長)、議員による政策提言、成果、コミュニケーション戦略など多岐にわたる。大会関係者からは目標として「地方議会の甲子園」という言葉がよく用いられる。
 分権改革が本格化して30年近く経た。だが、二元代表制の一翼を担う地方議会の政策努力や議会改革を客観的に評価、顕彰する場は残念ながら乏しい。
 一方で、メディアの報道は政務活動費を巡る不適切支出問題などに集中しがちだ。イメージの悪化は人材が参入しにくい一因ともなっている。
 それだけに、マニフェスト大賞は議会や議員個人の活動をアピールする得がたい場となっている。
 2006年11月10日、毎日新聞社内の1室を会場に行われた第1回授賞式は手作り感あふれるものだった。部門別の大賞を発表するたび、参加議員らからは歓声がわき起こった。筆者も取材記者としてその場にいたが、正直、15年持続することは想像しにくかった。
 それが、第1回に221件だった応募件数はすでに当初の10倍を超している。議員や議会にニーズがあった表れだろう。

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図 マニフェスト大賞の応募件数の推移

地方が起点だったマニフェスト運動

 14年前、大賞創設の中心となったのは、審査委員長を務める北川正恭早稲田大学名誉教授だ。三重県知事時代に「改革派知事」として注目された北川氏は、日本におけるマニフェスト運動の提唱者として知られる。
 マニフェストは2009年、旧民主党による政権公約が政権交代の象徴となった。だが、実際は2003年、北川氏の提唱に応じる形で統一地方選で増田寛也岩手県知事(現日本郵政社長)らがマニフェスト型公約を掲げたことが日本での始まりだ。公約を従来の「バラ色で抽象的なメッセージ」から「実行可能な具体的な約束」に転換する狙いだった。
 地方に軸足を置いたマニフェスト大賞がスタートしたのはその3年後だ。地方議員による実行委員会が主催し、早稲田大学の研究機関であるマニフェスト研究所、毎日新聞社が共催する基本的な枠組みは変わらない。
 折しも2006年、北海道栗山町が全国初の議会基本条例を制定し、議会改革ののろしを上げた。マニフェスト大賞がこれとほぼ同時期にスタートしたことは単なる偶然ではない。
 情報公開、議員間の議論、住民との対話など、住民と議会の距離を縮める方向性は一致している。

重層化していく人脈

 回を重ねるごとに、大賞に関わった人脈も重層化している。
 たとえば政令市長。川崎市の福田紀彦市長、熊本市の大西一史市長はそれぞれ市議、県議時代に大会実行委員長を務めた。コロナ対策を巡り情報発信が注目される熊谷俊人千葉市長も受賞経験を持つ。
 滋賀県大津市議会、北海道芽室町議会のように改革に継続的に取り組む議会の活動はモデルとして、他議会に影響を与えている。女性議員の活躍も目立つ。前回は「インクルーシブ公園」を提言した東京都議の龍円愛梨氏がグランプリを受賞した。
 前々回のグランプリは愛知県犬山市議会。市議のビアンキ・アンソニーさんが主導した議場で市民が自由討論する試みに注目した。
 大賞にはクリエイティブディレクターの箭内道彦氏、女優の秋吉久美子氏も特別審査委員として参加している。かつて、箭内氏はラップで選挙公約を伝える長崎県大村市議の試みに特別賞を授与した。その市議、園田裕史氏は現在、市長を務める。
 政党単位で活動しないケースも多い地方議員の場合、他県などの議員と横のつながりを作ることは難しい。議員が情報を共有し、連携する場としても大賞の存在は貴重なものとなっている。

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第14回の大賞授与式。北川正恭審査委員長がグランプリを龍円愛梨都議に授与(早稲田大学マニフェスト研究所提供)

裾野拡大がカギ

 もちろん回を重ねるにつれ、課題も生じている。とりわけ気をつけるべきなのは、応募団体や個人の固定化だろう。
 改革に継続的に取り組む地方議会と、情報公開や住民対話に関心を示さない「昭和の議会」の両極化が近年、指摘されている。かつて片山善博前鳥取県知事が「学芸会」と酷評した首長と議会のもたれ合い関係も、いまだに少なからぬ議会で温存されている。また、議会事務局にマインドがある人材がいるかなど、人的要因に改革が左右される面もある。
 このため、今回から、通年で改革が進捗した議会に着目して顕彰する部門が設けられる。また、関東や大都市圏に応募が偏在しがちだった地域差を縮小するため、第1次審査結果は「エリア選抜」という形で東北、中国などブロック単位で公表される。実行委員会メンバーにも今回、東北、四国、九州などの議員が加わった。

「コロナ」で問われる議会の役割

 緊急事態宣言が解除されたとはいえ、新型コロナ対策は議会活動に今後も大きな影響を及ぼすだろう。地方議会の一部には、質問を見送るケースもみられる。配慮は必要だろうが、活動を過度に自粛するようでは、議会が自らの活動を「不要不急」と認めるようなことになりかねない。
 コロナ禍の下、住民の安全、生活のため自治体や地方議会、民間団体がどう取り組んだかも今回は大きなポイントとなる。主催者側も、感染状況をにらみつつ、これまでにない課題に取り組みながらの運営となる。
 筆者は第3回から審査に加わっているが、議員や民間個人でもさまざまな挑戦が可能なことにいつも新鮮な驚きを覚える。オンラインを駆使しつつ運動の裾野を広げていく意味でも、第15回は節目となる。募集要項が公表され、7月1日から応募の受付が始まる(http://www.local-manifesto.jp/manifestoaward/)。ぜひ、多くの議員に参加してもらいたい。

人羅 格(毎日新聞論説委員)

この記事の著者

人羅 格(毎日新聞論説委員)

毎日新聞論説委員。1962年、札幌市生まれ。札幌北高校、東北大学法学部卒。85年毎日新聞社に入社。仙台支局を経て89年から政治部で国会、政党などを取材。17年4月から毎日新聞論説副委員長を経て現職。

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