明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所所長 廣瀬和彦
自己所有物件の事務所賃借料の政務活動費からの支出の是非
政務活動費の交付を受けている議員が、自宅の一室を政務活動の事務所として議員である自分自身に対して賃貸することとした場合、当該賃借料を政務活動費から支出することは可能か。
① 政務活動費における事務所費の意義
政務活動費における事務所費は、議員が行う活動に必要な事務所の設置、管理に要する経費で、具体的には事務所の賃借料、維持管理費、備品、文書通信費、事務機器購入、リース代等が想定されている。
② 会派交付の場合に事務所費を設定しない理由
ところが、政務活動費が会派交付の場合には、事務所費が費目として設定されていない場合がある。
その理由は次のとおりである。会派は政策を同じくするものの集団として議会において活動することが想定されており、一般的には議会棟において会派控室を当該地方公共団体の長から借りることにより議会内部においてその活動を行う。そして、外部に事務所を構えるのは会派としてではなく政党支部として構えることが一般的である。そのため、議会棟外部に会派が事務所を構えると、当該事務所が事業所とみなされ、会派が政務活動費の交付を受けていることから、その政務活動費が会派の雑所得として認識され、それゆえ所得を有する客体として税法上認識され、法人住民税における均等割りの対象となるおそれがあるからである。
しかし、法律上特に政務活動費が会派交付だからという理由で事務所費を使途基準に規定してはならないとの禁止規定はないため、事務所費を費目として定めることは何ら問題とならない。
③ 政務活動を行う議員自身が所有する物件又は自己が代表を務める法人が有する物件を賃借することに伴う政務活動費からの支出の是非
政務活動により事務所を賃借することは想定され、一般的に不動産を賃貸借する場合と同様、賃貸借契約を締結し、月払いにより支払うことは可能である。
その場合、第三者から賃貸することはもちろん、政務活動を行う議員の親族等が有する物件を政務活動のための事務所として賃借し、社会通念上適切な金額を支払うことは何ら問題とならない。
ここで問題となるのは、議員の自宅又は議員が代表者を務める法人所有の建物を政務活動の事務所とした場合の賃料を政務活動費から支払うことができるかどうかである。
この問題についての裁判所の考えは2つに分かれる。
まずひとつは、議員の自宅又は議員が代表者を務める法人所有の不動産を事務所とした場合には賃料が発生しているとはいいがたいため、政務活動費からの支出は認められないとする考えであり、平成22年3月26日熊本地裁判決や平成27年5月20日名古屋高裁判決、平成27年7月30日大阪高裁判決で示されている。
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