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2017.10.25 政策研究

任期と期数

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東京大学名誉教授 大森彌

 我が国の自治体では、公選職の議会議員と首長は、ともに任期4年となっている。この任期に関する議論はあまり聞かない。首長の任期4年は短すぎ、現職の首長が選挙を気にした施策に傾斜しがちになるといった指摘もあり、もう少し任期を長くしたらどうかという意見もなくはない。しかし、任期が議会制度改革の争点になったことはない。議会議員の4年任期についても、ほとんど問題にされていない。
 2つの公選職に任期があるということは、その任期が満了になれば、解任になるということである。しかし、再度、立候補して当選すれば首長あるいは議会議員を再び務めることができるから、首長も議員も何期までというように期数の制限はない。首長については、独任制であるため多選の弊害論はよく聞かれるし、期数制限の議論もある。しかし、合議体の議会を構成する議員については多選を問題視することはあまりない。議会の権限行使が議員間で共有されるからであろう。
 同一人物が連続して議員に就任できる期数は制限されていない。再選を期して何回でも立候補することができる。ある議員が何期も連続当選すると、あたかも議員職の再任が繰り返されているように思われやすい。しかし、そうではない。
 一般選挙で当選した議員は4年間議員の職に就くが、4年の任期が終了すれば議員ではなくなる。議会は4年任期で選ばれた一定数の議員によって組織される。4年ごとにいったん終了し、再び形成される。議会は法人としての自治体の議事機関であるから、この議事機関の任務を遂行する議員が選ばれて初めて成立する。任期が終われば現職議員は議員資格を失う。現職議員が再選されれば、再び議員資格を獲得するが、それは、新しい議会の議員になるのであって、議員職への就任が継続しているのではない。
 もちろん、4年ごとに議会が成立するといっても、それまでの議会活動の蓄積は新たな議会の制約ないし促進条件になるから、4年ごとに断絶状態が起こるわけではない。任期4年ということは、その間に選挙公約を実現する責任を負っているということであり、次の議会に迷惑になるような不備や不都合は残さないということである。
 任期があるということは、議員の任期の満了日があらかじめ分かっていることを意味する。地方自治法では、任期満了前30日以内に選挙期日を定めることになっている。任期満了日の前に選挙が行われ次の議員が決まっているということは、議会活動の停滞を避けるためであって、議会が継続しているのではない。議会は任期ごとに、いわばリセットされるのである。
 その意味で、同一議員の当選回数、いわゆる期数は意味を持たない。何回当選しても、そのつど新たな議会の一議員になるのである。議員になるということは議事機関になるということであるから、議事機関の任務を遂行できれば誰でもよいのであって、男女の区別も、年齢や期数の違いも関係はないはずである。
 しかし、自治体レベルでも、政治の世界では期数は無視し得ない意味や効果を持っている。と同時に、期数を重視することに伴う問題もなくはない。以下、この点を検討したい。
 自治体の選挙管理委員会が出す選挙結果情報には当選者が現職か新人かを記載しているし、議会が出す議員一覧には当選回数が書かれている。当選回数の1と当選回数の5とか6とでは違うのだぞといいたげである。しかし、期数が多いことは、選挙に強い、あるいは選挙が上手であるかもしれないが、それは必ずしも議員としての資質の保証にはならない。むしろ問題は、何期も当選すると、自分が大物議員であるような錯覚に陥り、新人と同列に扱われるはずはないと思い上がりが出てくることである。
 なるほど、何期も当選した議員は、新人議員に比べれば、議会運営の慣習や執行機関との関係等については詳しいだろうが、それらは議員としての任務遂行にとって最も重要な事柄ではない。何期も連続当選したベテラン議員だから議事機関としての任務を適切かつ十分に果たしているとは限らない。もちろん、新人の1期生であっても「1期生なので、勉強中です」などという言い訳が通るはずはない。議員になろうとするならば、議員に立候補する前に自治体と議会・議員に関する基本的な知識を備えていなければならない。

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