2017.10.25 議会運営
第55回 動議の一般的解釈と質疑・討論省略の動議の取扱い
明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦
動議の一般的解釈と質疑・討論省略の動議の取扱い
A議会において定例会本会議中にB議員より会議規則に定める要件を満たし質疑(又は討論)省略の動議が提出された。当該動議に対し議長はどのように取り扱うべきか。
動議とは、一般に議案以外のもので、会議の意思決定を求める提案をいう。動議については標準議会会議規則(都道府県議会・市議会・町村議会16条)において提出に当たっての要件が規定されている。
【都道府県議会・市議会会議規則16条】
動議は、法又はこの規則において特別の規定がある場合を除くほか、他に○人以上の賛成者がなければ議題とすることができない。
【町村議会会議規則16条】
動議は、法又はこの規則において特別の規定がある場合を除くほか、他に1人以上の賛成者がなければ議題とすることができない。
動議は一般的に会議の途中において発議され、その発議方法は一般的に、①原則として口頭により発議する、②案を備える必要がない、ことによって行われる。
ここで会議規則16条において「法又はこの規則における特別の規定による動議」とは、地方自治法115条の秘密会の発議、同115条の3における修正の動議、同135条の懲罰動議を指す。
なお、秘密会の動議の発議については議長又は議員3人以上の発議により、修正の動議については議員の定数の12分の1以上の発議により、懲罰の動議の発議については議員の定数の8分の1以上の者の発議により提出することができる。
次に、動議の種類は多数あり、その区分は困難である。しかし、あえて動議をその内容によって区分するならば、独立の動議とそれ以外の動議に分けられる。
独立の動議とは、当該動議だけで独立して議会の議決の対象となることができる動議を指す。例としては、懲罰動議、会期延長の動議、議長不信任動議等がある。
これに対し、独立の動議以外の動議とは、次の4つがある。
すなわち、①会議に付随する動議、②議事に付随する動議、③選挙に付随する動議、④その他の動議がある。例としては、①は休憩の動議、②は質疑、討論終結の動議、③は指名推薦の動議、④は特別委員会設置の動議(案件に付随して特別委員会を設置する場合)等がある。
次に、動議の発議は地方自治法115条1項の秘密会における議長発議を除き、議員にのみ認められたものである。
それゆえ、議員以外の者から動議が発議されてもその効力は生じないこととなる。しかし、例えば全議員に異議がない動議を議長が発議する場合にまで、原則を貫くことは議事運営上効率的であるとはいえない。そのため、法上、議長発議の規定はないが、会議運営上又は議事進行上必要な場合において、議長は中立公平な立場から動議を提出することができると考える。
動議の賛成者は会議規則16条に規定されるように、都道府県議会及び市議会会議規則では○人以上の賛成者、町村議会会議規則では他に1人を要すると規定されている。なぜ動議に賛成者を要するのかというと、①動議は議決を要するものであり、単なる発言と区別する必要があるため、②1人以上の賛成者も見込めないような動議は取り上げても議決される見込みがないため、議事能率の観点から賛成者を要するという規制はあっても問題ないため、といえる。
動議を議題とするには、動議が発議され他に○人以上の賛成者又は1人以上の賛成者があって動議が成立した後に議題とすることができる。
なお、動議が成立したからといって自動的に議題となるものではなく、議長による当該動議の議題宣告があって議題となる。
また、動議が成立した後、直ちに議題としないからといって、当該動議が消滅するわけでなく、行政実例昭和24.12.1のとおり、会期中に提出された議案と同様、議長は動議が提出された会期中に議題とする義務を負う。