地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2025.10.27 政策研究

第67回 多元性(その1):政府間関係

LINEで送る

東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之

はじめに

 自治体は単体で存在しているのではなく、多数の自治体が存在し(多数性=連載第27回~第31回)、また、複数のレベルからなる多層制である(多層性・補完性=連載第6回~第9回)。自治体が住民に対してサービスを提供するときには、他の自治体や国との関係が必須である。また、住民から見れば、自身の居住する自治体として、広域自治体と基礎的自治体の双方との関係が発生するし、国とも関係する。それだけでなく、居住しない自治体との関係も登場する。
 国は、全国政府(national government)又は中央政府(central government)と、講学的に呼ばれる(1)。自治体は、都市政府(municipal government)・地域政府(regional government)又は地方政府(local government)・自治政府(self-government)などと呼ばれる。その点からすれば、国・自治体を一括して「政府(government)」と呼べる(2)。そこで、国と自治体との関係、自治体と自治体との関係を総称して、政府間関係(intergovernmental relations:IGR)とすることができる。自治体の世界は、孤立した単独の閉鎖的な一元的な領域ではなく、他の自治体や国との関係が不可避的に発生する多元的な世界である。

連邦制と単一主権制

 一般的には、統治機構のあり方については、三権分立制や大統領制・議院内閣制などが著名であるが、それに加えて、連邦制と単一主権制という分類・類型論がある(3)。そして、単一主権制の中に、(地方/都市)自治制が存在することが普通である。ただし、自治制が、その他の社会団体・中間団体の自治と同質であって、統治機構ではなく民間側・社会側の存在なのか、あくまで、統治機構の側の存在なのかという理解の相違はあり得る(4)。通常、自治体も強制力に基づいて、租税などの法的義務を課せる存在なので、統治機構の一部と理解される。
 連邦制とは、それぞれが主権国家(state)でもある州(state)・邦(land)が、強力に結合して統治機構である連邦(federation)を構成する。この場合に、連邦政府(federal government)と州政府(state government)との関係が連邦制(federalism)である。各州(邦)は、名目上は主権国家であるが、外交・防衛その他連邦政府専管事項では、連邦政府が単一の意思決定をして、他国と関係を結ぶので、実態上は連邦政府自体が全国的・一国的な存在である(5)。単なる国家間の同盟関係や連合関係よりは、連邦制における結合度合いは強いとされている。
 自治制とは、連邦制と対比される単一主権制の国家(state)の中に、国(中央政府・全国政府)とは異なる自治体を設置して、一定の団体自治・住民自治を認める統治機構である。連邦制においても、州という主家国家の中に、州政府と自治体政府が存在し得る。
1

表1 連邦制と自治制

 もっとも、主権は国家にあるので、自治体はあくまで主権国家によって設置・改廃又は保障される存在(「国家の被造物」)である。国家=国(中央政府)と理解すれば、自治体(地方政府)は国(中央政府)の意図(法律又は政令など)によって、一方的に設置・改廃されてしまう。しかし、国家≠国と理解し、主権国家の中の統治機構として国と自治体とがあるならば、国の意図のみによっては、一方的に自治体は設置・改廃されない。主権国家の意図は、主権=憲法制定権力の発動である憲法に示され、憲法に自治制度保障が盛り込まれれば、国の法制定なども、こうした憲法の自治制度保障に拘束される。憲法が自治制度保障をしなければ、国=国家として、国によって自治体を一方的に設置・改廃できてしまう。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年1216

山の手線開通(明治42年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る