地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

特集 今こそ見直す予算審議ー地方議員に求められる視点とは―

2025.07.25 予算・決算

「財政が厳しい」とはどういうことか

LINEで送る
 
Office aNueNue代表(元・福岡市財政調整課長) 今村 寛

「財政が厳しい」ってどういうこと?

  議員の皆さんにお尋ねです。国、地方とも「財政が厳しい」とはよく聞きますが、具体的に何がどう厳しいのか、有権者の皆さんから尋ねられたとき、きちんと説明できますか。それ以前に、ご自身でどのくらい「財政が厳しい」という言葉の意味を理解しておられるでしょうか。
 人口減少社会が到来し、納税者人口が減少する一方で、少子高齢化に伴う社会保障費の増加や公共施設の老朽化、多様化する住民ニーズへの対応など行政が担うべき責任は日増しに重くなっています。税収が減る一方で業務が増大し、関連する支出も膨れ上がっていく。それが「財政が厳しい」ということだと何となくはイメージできますが、今どの程度危険なのか、まだ余裕があるのかはよく分からず、いつか財政破綻してしまうのではないか、そんな不安も頭をよぎります。
 私は過去に福岡市の財政調整課長を務め、その際に取り組んだ財政健全化の理念や手法について財政畑を退いた今でも全国各地で講義講演を行っていますが、そこでのメインテーマが今から10年ほど前、私が福岡市で財政健全化に取り組むに当たり行っていた職員向け財政出前講座で語っていた「財政が厳しいってどういうこと?」です。今日は本ウェブマガジンでその概要をご紹介します。

年収8千億円でも「財政が厳しい」

 私が福岡市の財政調整課長に着任した平成24年(2012年)当時、福岡市の一般会計の規模は約8千億円。これだけあって何が「財政が厳しい」のかとお叱りを受けそうですが、そんなことはありません。一般会計の歳入の半分は国補助金等の特定財源、使途が定められているいわゆる「ひも付き」のお金で、自治体が自由に使途を定めることができる一般財源は市税、地方交付税等を合わせ約4千億円。収入総額の半分程度でした。
 それでも4千億円もあれば財政運営で困ることなどなさそうですが、この自由に使える一般財源の4千億円が何に使われているかを見てみると、人件費、扶助費、公債費といういわゆる義務的経費への充当が6割を占め、自治体が裁量で使える経費に充てることができるのは4割程度しかないという状態だったのです。
 一般財源の将来見込みを推計しても、税収が増えればその一定割合が減じられる地方交付税の仕組みの中で、一般財源そのものは大幅な伸びが見込めません。その一方で、人口増加が続く福岡市で増加するのは老年人口のみという推計になっており、今後10年間で扶助費や医療介護等への特別会計への繰出金は、一般財源で約3割程度増加すると見込まれていました。人件費は政令指定都市平均の3分の2程度しかいない職員数でこれ以上削る余地がなく、過去の社会資本整備の際に積み上げた借金の返済に当たる公債費は、市債の償還が長期にわたるため緩やかにしか減少していかないということもあり、義務的経費に充当する一般財源は社会保障費の増加により漸次増加していく見込みとなっていました。
 加えて、これまで豊かな都市生活を実現するために整備してきた公共施設等の社会基盤が老朽化し、今後も同規模、同程度の社会基盤を維持し続けるには大規模修繕、建て替え等の財政負担が発生することになりますが、これを年度当たりの費用を抑えて平準化し、施設を長寿命化していくには、計画的な修繕が必要になります。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 820

NHK創立(昭和元年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る