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2025.04.25 New! 政策研究

第61回 経営性(その1):行政管理

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之

はじめに

 国や自治体などの政府団体も、組織という点では、企業などの民間団体と、同質である側面がある。企業について「経営」や「経営管理」や「執行」と呼ばれる現象は、国や自治体にとっては「行政」や「行政管理」や「管理運営」と呼ばれる現象に相当する。そこで、今回以降、両者を一括して、「経営」として捉えて、自治体における経営性として、議論を進めてみたい。
 もっとも、時代によって好まれる用語も多様であり、それ自体が実践的又は規範的な意味を持っているので、細かいニュアンスの違いも大事であろう。英語でも、“management”、“administration”、“executive”などが、文脈によって多様な意味で使われる。一般に「行政」と翻訳される“administration”も、民間でも見られる「経理」や「経営」の意味で使われることもある(1)。そのときには、「行政(public administration)」と「企業経営・経営管理(business administration)」と対比して使われることもある。
 しかし、日本語の「行政」は、政府(government)又は公的部門(public sector)に特有の現象とするのであれば、民間の経営には使いにくい。そのときには、管理又は経営が、行政と企業とに共通する現象となろう。行政管理(administrative management)と、企業における経営又は管理ないしは経営管理(management)と呼ばれよう。その延長では、行政管理(administrative management)は、公共管理・公共経営(public management)でもある。
 このように、似たような現象に対する、しかし、しばしば、似て非なるとされる現象に対して、様々な用語が充てられる。とはいえ、こうした状況のままでは、概括的な議論を進めることができない。この連載での経営性は、個々の文脈を無視して、ある意味で、脱色して包括的に使うことにする。

自治体と経営性

  自治体も、政府部門の一要素、あるいは、「地方政府」、「地方行政」、「市民政府」などでもあるので、行政管理の側面を持つ。同時に、自治体は、国あるいは「中央政府」、「全国政府」と比べれば、権力的な規制・監督というよりは、事業遂行・業務執行・サービス提供の側面が強い。古い用語でいえば、行政事務よりも公共事務の側面が多いということになる。その意味では、民間企業により近いともいえよう。行政と企業の異同をどのように捉えるにせよ、自治体には企業と同じく経営という現象がある。
 とはいえ、自治体で「経営」と日本語で表現する場合には、しばしば、旧来型の官僚制的な「行政」あるいは「行政管理」とは違う、というイメージを出すことも多い。例えば、1990年代頃より一世を風靡(ふうび)した「NPM(新公共経営、ニュー・パブリック・マネジメント(new public management))」などは、その典型用法であろう。仮に「新(new)」たな「公共経営(public management)」があるならば、「旧・古(old)」(くさ)い又は「伝統的(traditional)」な「公共経営(public management)」があるはずである。もっとも、「経営」は旧来とは違う現象を意味するのであれば、「旧公共経営」は概念的に矛盾を来すのであり得ない。そのような場合には、「行政管理」などと呼ぶしかないだろう。

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