2025.02.25 議会改革
【セミナーレポート】地方議員のための自治体財政基礎講座:予算書チェックではまちづくりができない理由
2025年2月6日(木)、早稲田大学マニフェスト研究所の主催で、「地方議員のための自治体財政基礎講座:予算書チェックではまちづくりができない理由」と題する講座が開催されました。当日の様子をレポートいたします。
オープニング:問題提起
最初に、中村健氏(早稲田大学マニフェスト研究所事務局長)より、オープニングと題して、いくつかの問題提起がなされました。中村氏は、まず予算とは「一定期間の歳入と歳出を計画的に示し、目標を達成する重要なツール」、「経営資源を効率的に配分するツール」と定義しました。
次に問題提起があり、人口の減少による社会構造の変化が起こっていること、自治体における執行部や議会の体制が縦割りであることなどを指摘しました。予算編成のあり方も社会構造の変化に左右される上に、縦割りのままであることを指摘しました。
そのような実態を踏まえて、中村氏はまちづくりは「横ぐし」でやるべきと話しました。その実践事例として、高森町役場の例が出されました。
中村氏が高森町役場から相談を受けた際、部局ごとの縦割りの実態があったこと、そのことについて、中村氏と建設課の職員が相談したことがきっかけとなり、職員と住民の交流が深まったことで職員の意識が高まったこと、部署横断的な子育て政策が進み、建設課だけでなく、他の税務課や上下水道課や総務課など、他の課も子育て対策に積極的になったこと、実際に高森町の人口は減少傾向から横ばいに変化し、実績を上げていることを発表しました。そして、まちづくりをしていくためには、お金も職員も増やせばよいわけでないと指摘しました。
はじめの問題提起と高森町の事例を踏まえて、中村氏は「まちづくりは共創」であり、行政、住民、議会の連携が必要であること。予算の改善だけでまちづくりができないときには、意識や考え方の問題も潜んでいることを指摘しました。このようにまちづくりの在り方について考えを共有した後、今村氏からの講演が始まりました。
講演:「予算書ではわからない予算のツボ~予算審議を始める前に~」
次に今村寛氏(元福岡市財政調整課長 経済局総務・中小企業部長)より、「予算書ではわからない予算のツボ〜予算審議を始める前に〜」と題した講演が行われました。まず最初に自治体財政の構造についての解説がありました。最初の講演の中で、今村氏は「財政が厳しいとはどういうことなのか」という問いを主眼に、自治体財政の構造的な課題について解説しました。
今村氏は講演の中で、予算について知る前に、「なぜ財政が厳しいのか」「そもそも財政が厳しいとはどういう状況を指すのか」「その結果、どこにお金が足りないのか」と、財政の根本的な部分から解説しました。
特に「なぜ財政が厳しいのか」については、自治体の経常的経費が、公債費、社会保障費、人件費、公共資産の維持管理費が財政を圧迫していることや、その経緯と歴史、そして一般財源の中で政策的経費(社会課題解決のために新たに投じる経費)の必要性を解説しました。
休憩を挟み、後半の講演「「財政健全化」のためにすべきこと」という講演が行われました。この講演では前半部分で解説した「財政が厳しい」ということを踏まえ、政策的経費の財源を確保するために、どうやって経常的経費を見直していけばよいのかについて解説しました。
その中で、財政健全化は目的ではなく、政策推進のための手段であるとし、「何を削るかではなく、何を残すか」と考え方を変えていくことを提案しました。そのために、スクラップ&ビルドではなく、まずやるべきことを考えてから、優先順位の低いものを削っていく「ビルド&スクラップ」という考え方と、実現する具体的な手法として「枠予算」を提案しました。
講演の最後では、「枠予算」を実施していくための優先順位のつけ方や、財政課から他課への権限と責任の委譲、政策実現のための論理の展開の仕方について説明しました。そして最後に、自治体の首長や職員、議員とは、市民同士でぶつけることが困難な対話を、代理で行うための存在であり、自治体を機能させるためには、代理人(自治体の首長や職員、議員)同士が対話を深めていくことが大事であると、講演を締めくくりました。
最後に:全体質疑応答&意見交換
講演後、意見交換会があり、参加者で記念撮影をして、セミナーは終了しました。
今回、今村氏が講演した内容の一部は、今村氏のnoteでも読むことができます。noteを読んで気になった方は次回の講演に参加してみてはいかがでしょうか。
https://note.com/yumifumi69