2025.01.27 政策研究
第58回 組織性(その4):団体・法人・身体・機関
東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之
はじめに
自治体は組織であるとしても、組織とは何であるかは、なかなか厄介な問題である。憲法によれば「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」(92条1項)とあり、これを受けた地方自治法が、要するに、「地方公共団体の組織及び運営に関する法律」ということになろう。実定法制上は、「地方公共団体」とされている(1)。
法制では、「団体の組織」であって、「組織としての団体」あるいは「組織の団体」ではないので、組織よりも団体の方が上位にあるように見える。あるいは、団体の中に組織があるともいえる。ないしは、対外的には団体(外延)であり、対内的には組織(内包)かもしれない。とするならば、ともあれ、組織性を論じる以前に、まずは団体性を論じなければいけないようである。裏返していえば、本連載本号等での組織とは、実定法制でいう組織よりも広い概念である。
憲法との関係では、地方自治法は会計検査院法と似ている。憲法の「会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める」(90条2項)を受けて、会計検査院法では、「第1章 組織」、「第2章 権限」と大別されている(2)。会計検査院の組織は、検査官会議(検査官も含む)と事務総局である(2条)(3)。しかし、地方自治とは異なって、団体の中に組織があるのではなく、会計検査院という組織が、検査官会議と事務総局から組織される、あるいは、会計検査院という統治機構が、検査官会議と事務総局という組織から構成される、という感じである。会計検査院は団体とはされていない。また、地方自治法は、どこまでが組織で、どこまでが運営かは、明示していない。
講学上の行政組織法という意味では、地方自治法は国家行政組織法と対置されることも多い(4)。もっとも、国家行政組織法については憲法では何の規定もない。憲法で規定されているのは「内閣」や「行政各部」だけである。ともあれ、国家行政組織法によれば、「行政機関……の組織の基準を定め、もつて……必要な国家行政組織を整える」(1条)とされるので、機関の中に組織(内部部局など)があるようにも見えるが、「国家行政組織は、……行政機関の全体によつて、系統的に構成されなければならない」(2条)ともあるので、機関=組織のようでもあるし、機関の全体によって系統的に構成されたもの=組織であるならば、機関よりも組織が上位、あるいは組織の中に機関があるようにも見える。明示されていないが、地方自治法制との類比に立てば、国家行政組織又は行政機関よりも、国という団体が上位にあると見ることができよう。この点は会計検査院でも同様であろう。