2025.01.27 議会運営
第96回 一事不再議の原則とその取扱い/一般質問における除斥
明治大学政治経済学部講師/株式会社廣瀬行政研究所代表取締役 廣瀬和彦
一事不再議の原則とその取扱い
国会で議論が行われている103万円の壁に係る措置について、住民から当該措置の引上げは必要ないとの請願が提出された。一方で、請願が提出された議会では103万円の壁について見直しを求める意見書が提出された。定例会で請願と意見書が一括して審議されたが、この場合どちらの議案を先に採決すべきか。また、一方議案の採決がなされた後に、もう一方の議案の採決はどのように行うべきか。
設問における意見書と請願は、内容的に対案関係にあるので、一事不再議の原則を適用すべきかどうかが問題となる。
一事不再議の原則とは、標準市議会会議規則15条にも規定があり、議会において一度議決した事件については、特別の場合を除き、同一会期中において再度審議することができないことをいう。
【標準市議会会議規則15条】
議会で議決された事件については、同一会期中は、再び提出することができない。
一事不再議であるかどうかを最終的に判断するのは議会である。
そして、一事不再議の原則の主な効果は次の5点である。すなわち、①議会が議決した事件と同一内容の事件を再び審議することはできない、②一事不再議の原則は同一会期において適用される、③一事不再議の原則は例えば本会議と委員会というように審議の段階が異なる場合は適用されない、④一事不再議の原則は同一形式の事件、例えば条例案同士や決議案同士について適用される、⑤事件を撤回した後、同一内容の事件を再提出し議決しても一事不再議の原則は適用されない、である。
また、一事不再議の原則が適用にならない主な場合は次の7点である。すなわち、①地方自治法74条に基づく直接請求による条例の制定改廃、②地方自治法176条及び177条に基づいた再議、③請願及び陳情、④議事進行の動議、⑤事情変更、⑥議会運営委員会又は議会において別個のものとみなす旨議決した複数の修正案、⑦同一内容である意見書と決議のように形式が異なる議案、である。
設問においては、そもそも意見書と請願という形式が異なる議案であり、さらに住民から提出された請願には一事不再議の原則が適用にならないため、理論上、一事不再議の原則を適用させる余地はない。