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2016.12.26 政策研究

【フォーカス!】カジノ

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国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。

誘致に動く自治体、成果は?

 カジノを中心にホテルやレストラン、会議場などが一体となった統合型リゾート施設(IR)整備推進法、いわゆるカジノ法が12月15日未明、臨時国会でわずか2週間の審議の末、自民党や日本維新の会などの賛成多数により可決、成立した。正式名称は「特定複合観光施設区域整備推進法」となっている。
 カジノ法はいわゆるプログラム法である。目的には、①観光および地域経済への振興、②財政の改善に資する―を掲げており、内閣府の外局にカジノ管理委員会を設置、内閣に特定複合観光施設区域整備推進本部を置く。国や地方自治体はカジノの設置者や運営者から納付金、入場者から入場料を徴収できるとした。政府に対しては1年以内をめどに実施法の作成を求める内容で、この法律だけでカジノ解禁を意味するわけではない。
 もともと200人を超える超党派の国会議員からなる「国際観光産業振興議員連盟」で議論されてきた。ところが自民党が突然動いて11月30日に衆院で審議入り。6時間に満たない議論、しかも般若心経の説明をする質問者さえ出る中で衆院を通過した。参院ではさすがに参考人の質疑はあったが、ギャンブル依存症対策をどうするのかなど多くの課題は積み残されたままとなった。
 自民党の強行に対し、与党の公明党は自主投票を選択し、参院本会議では山口那津男代表が反対。衆院本会議では井上義久幹事長が反対する事態となっている。
 自民党が急いだのは、日本維新の会の存在が大きい。維新の松井一郎代表(大阪府知事)は「IRは雇用拡大のためにも必要だ。世界から素晴らしいと思われるものをつくりたい」と語ったように、大阪府・市は共同で、2025年の開催を目指す国際博覧会の候補地である大阪市此花区の人工島・夢洲への誘致を目指している。
 自民党としても、カジノで維新に恩を売っておけば、憲法改正の際の協力が得られると考えたとしても不思議はない。「下駄の雪」とも揶揄された公明党だが、憲法改正には自民党とは温度差があり、改正を盤石なものにするには維新の取り込みを図ったということだろう。
 もともとカジノ導入の動きは、石原慎太郎氏が東京都知事時代に「お台場カジノ」を言い出したのがきっかけだ。都の検討結果、「刑法で定める賭博ではない」とのお墨付きがなければ無理ということとなり、国の対応を待つことになった。
 最近は大阪だけでなく、横浜市の林文子市長も記者会見で「人口減少や超高齢化に直面しており、財政基盤を強化しなければいけない。外国人観光客の誘致に資する点でもカジノは必要だ」と話し、誘致に動く。このほか北海道苫小牧市、長崎県佐世保市のハウステンボスなどが取りざたされている。
 誘致の最大の理由は、増加する訪日客のさらなる上乗せにある。6月に閣議決定された名目国内総生産(GDP)600兆円に向けた成長戦略「日本再興戦略2016」でもIRは「観光振興、地域振興、産業振興に資することが期待される」と評価している。
 ただ、中国の富裕層が、マカオやシンガポール、韓国のカジノに行くように日本のカジノに来るかは未知数だ。さらに、日本人がカジノで散財したとしても、それは他の地域の消費がカジノに移転するだけであって、GDPの上乗せにはあまり効果がない。IRは顧客を囲い込む施設であるため、周辺地域との共存は難しいという大きな課題もある。
 つまり、IRが整備されたからといって、自治体の財政が潤う保証はない。もし第三セクターでIRを整備したとすれば、大きな借金だけが残る可能性もある。民間だけで整備すれば、囲い込みを制限しなければならないだろう。ギャンブル依存症だけでなく、自治体の経営においても多くの問題がある施設であることを忘れてはいけない。
 
▼主な資料
・法律
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/g18901020.htm
 
 
 

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