2016.11.25 政策研究
【フォーカス!】小池知事3ヶ月
国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。
漂う手詰まり感
小池百合子東京都知事が就任して約4カ月。豊洲市場の移転問題や東京五輪の競技場見直しを打ち上げ、メディアの注目を集めているものの、具体的な成果にはまだつながっていない。手詰まり感さえ漂い出している。
その引き金の一つが11月18日の記者会見と考えられる。小池氏が築地市場から豊洲市場への移転までの新たな工程表を発表し、もし移転するとすれば豊洲の開場時期が最短でも2017年冬から2018年春になるとしたことや、開場の遅れによる被害者の存在が顕在化してきたからだ。
工程表によると、2017年1月に豊洲市場の地下空間にたまっている地下水のモニタリング結果が出て、それと合わせて盛り土がなされなかったこの空間の安全性の検証と必要な対策を検討し、5月に報告書を取りまとめる。その後、環境アセスメントが不要となったとしても、必要な追加工事対策(入札から完了まで6カ月)、農水大臣への認可手続きを経て移転に向けた環境が整うというスケジュールだ。もし再アセスが必要となると、その期間が15カ月必要とされるため、環境が整うのが2018年冬から2019年春となる。東京五輪に向け築地市場跡にできる環状2号線の整備も間に合わないことになった。
これを受けて東京都は、もともと11月7日の移転を予定して豊洲に設備投資した市場業者らへの補償を業者が支払う市場使用料で運営する「市場会計」で実施することも発表した。
これに対し「東京都水産物卸売業者協会」の調べでは、損失は1カ月で約4億円に上る。さらに移転を前提に新規投資している業者も多く、どれだけ補償されるかによって市場関係者の不満が高まるのは必至だ。さらに開場の遅れは都側の責任にもかかわらず、補償に市場会計を使うことに対しては「筋違い」とする反論も強くなっている。
これまでは小池氏の“英断”のトーンで報道されることが多かった豊洲問題だが、市場関係者という被害者が出てきたことから、その負の側面もテレビなどに流されることになった。このことから世論の見方が変わる可能性もある。
東京五輪の3会場の見直しについては、国際オリンピック委員会(IOC)、大会組織委員会、東京都、政府の4社による協議で調整し、12月上旬のIOC調整委員会の会合で決定される見通しだ。
だが、宮城県まで巻き込んだボートなどの会場を都内臨海部に新設する「海の森水上競技場」から「長沼ボート場」(宮城県登米市)に移すかなど3つの開場見直しは、競技団体からの反発などから頓挫気味で、会場の設備を再考してコスト削減する程度で落ち着きそうな雰囲気。
会場の変更がなくとも経費削減につながれば、それを成果としてPRするのも一つの方策ではあるが、当初の都民の受け止めとは異なるだけに、がっかり感が出るのも否めない。
丸川珠代五輪担当相は11月8日の記者会見で、小池氏の就任100日目を迎えたことについて「当選後100日はハネムーンだ。ご自身も、これからが大切だと思っているのではないか」と指摘。11月15日の都議会総務委員会では、小池氏のリオ五輪随行者が発表された4人ではなく、5人ではないかと指摘され「正しく情報提供しなければ、パフォーマンスだ」と突っ込まれる一幕もあった。
小池氏の政治塾「希望の塾」は11月12日、2回目の講義を開き、元知事の猪瀬直樹氏と、小池氏のブレーンを務める上山信一慶応大教授が講師として登壇した。だが、日本維新の会の法律政策顧問を務める橋下徹前大阪市長は講師依頼を断った。
小池氏のハネムーンは確かに終わり始めているようだ。
▼資料
・記者会見
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/governor/governor/kishakaiken/2016/11/18.html