2016.11.10 政策研究
第2回 自治体財政の基本を押さえよう②
江東区政策経営部企画課長 武田正孝
新人議員の新(あたらし)議員(だんご市議員1期目、30代・女性)の叔父に当たる前財(ぜんざい)課長(おわん市課長、50代・男性)は、おわん市でかつて財政課長を務めていました。新議員は前財課長に自治体の財政について、いろいろと質問をしています。
前財(ぜんざい)課長
おわん市入庁30年目。昨年度まで財政課課長を務めていた。50代半ばを迎え、後進の育成に熱心に取り組んでいる。
新(あたらし)議員
だんご市市議会議員。昨年の4月に地方選挙で議員になったばかり。民間企業での勤務を経て、議員を志した。まちづくりや教育に興味がある。年齢は33歳と、議会の中でも最若手。前財課長の姪(めい)っ子。
前回の説明で、自治体財政には歳入・歳出・基金・地方債の4つのポイントがあることを知りました。その4つが関係し合って、財政運営が行われており、それが自治体財政の基本構造ということですよね。

そう。家計の収入・支出・預金・借金と同じで、その中でいろいろやりくりしているということだよ。

ただ、そうはいっても、自治体の財政と家計は全く同じではないですよね。

もちろん、そのとおり。異なる点はたくさんあるんだけど、まずは基本的なルールを押さえておくことが大事だよ。

そのルールとは、具体的に何ですか?

今後、たくさんのルールを知っていくと思うけど、今回は基本的なルール3点に絞って整理してみよう。

1 一般会計と特別会計
一般会計とは、自治体の会計の中心をなすもので、行政の基本的な経費を網羅したものである。特別会計とは、“特定の事業”を行う、“法律で定められている”など、特別の必要がある場合に、一般会計から区分した会計をいう。それぞれについて整理すると、以下のようになる。
(1)一般会計
一般会計は、行政に要する収支を総合的に経理するもので、自治体の基本的な活動に必要な、あらゆる経費を計上した当該団体の根幹となる会計である。家計でいえば、メインとなるお財布といえる。しかしながら、何を一般会計の対象とするかは、それぞれの自治体の判断によって異なる。このため、A市で一般会計に含まれる事業が、B市では特別会計に含まれることがある。
(2)特別会計
特別会計は、特定の事業・資金などについて特別の必要がある場合に、一般会計から区分して、その収支を別個に経理するための会計である。一般会計が家計でいうとメインのお財布となるのに対し、特別会計は特定目的用のお財布(家計でいえば、光熱水費支払用、保険料支払用など)と考えると分かりやすい。
特別会計には、「法律により設置が義務付けられているもの」と、「条例により設置するもの」の2種類がある。前者の具体的なものとして、国民健康保険、介護保険などがある。後者には、①自治体が特定の事業を行う場合(地方公営企業に係る特別会計など)、②その他特定の収入をもって特定の歳出に充て、一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合(特定の歳入を財源とする貸付事業に係る特別会計など)がある。
なお、特別会計の中には公営企業会計というものがある。これは、地方公営企業に係る会計で、具体的には病院会計、交通事業会計(路面電車やバスなど)、水道事業会計などがある。
(3)一般会計と特別会計のやり取り
一般会計と特別会計は別個の会計(お財布)となる。しかし、一般会計と特別会計の間、又は特別会計間でやり取りがされることがある。例えば、特別会計である国民健康保険会計において、決まった保険料などの歳入だけでは歳出を賄えないため、一般会計の予算を国民健康保険会計に充てる場合などである。この場合、一般会計からは「歳出」の繰出金として支出され、特別会計には「歳入」の繰入金として受け入れる。このため、一般会計と特別会計の額を合計しても、その額の一部が重複しているため、当該自治体の純粋な額の合計とはならない。