2016.11.10 政策研究
【フォーカス!】描けるか新しい分権像
国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。
全国知事会が有識者会議
今後の新たな分権改革を展望するとして、全国知事会は11月2日、第1回「地方分権に関する研究会」を東京都内で開いた。地方分権推進特別委員会の下に設置する形で、2017年7月に岩手県で開く全国知事会議までの意見集約を目指すとしている。
今回の検討では、20年間の取組で、地方分権改革は着実に進展する一方、少子高齢化、人口減少の本格的な到来、東京一極集中による国土の不均衡拡大など社会情勢が大きく変化し、地域間の格差も拡大し、参院選の合区問題や地方税財源の偏在など諸課題が顕在化しているとの分析を前提とする。
そして、①格差や偏在については、縮小や是正に向けて、国として果たすべき役割がある、②国と地方の協議の場などにより国の立法面も含めた政策プロセス全般に地方が関与することが必要である、③地方分権は引き続き推進する必要がある、④地域コミュニティーの衰退などを受け改めて住民自治の在り方を考える必要がある、⑤地方財政については制度の根幹を支える基本的な理念を改めて確認しておく―とした上で、地方分権改革、住民自治、地方税財源、憲法といったテーマごとに、中・長期の方向性を議論するとした。
これを受けた自由討論で、知事会長の山田啓二京都府知事は、「地方分権は低調である。方向性を見いだせない。弱肉強食の地方が蹴落としあう状況にある。総務省も自治省の時代に比べて果たす役割が弱くなっている」と危機感を表明、さらに、「これまでの全国知事会議で、少子化非常事態宣言、地方創生など地方課題の解決を掲げることで、分権が空白になっていることを隠してきた。分権、自治は必要で、新しい旗を立てていかないといけない」と述べた。その上で、国が進める「選択と集中」についても、「大本営発表、転進のための撤退では、自治はおしまい。行政の前提である価値中立社会も見直し、共生社会に変えていく。分権というよりも共生を進める」などと、問題提起した。
地方税財政常任委員会委員長の石井隆一富山県知事も、「自主自立を言いながらも、税財源は、国に対しお金を頂戴と言っているところがある。自前で地方税財源を確保するための努力をする。地方も汗をかく必要がある。宿泊税や廃棄物税、スマホ利用など新たな税を検討する必要がある」と述べた。
地方分権推進特別委員会委員長の平井伸治鳥取県知事は、「戦後の民主主義は制度疲労が来ている。地方分権ではなく、国、地方が一緒に働くという形があってもいい。従来の枠を超える制度、設計がいる」と語った。
総合戦略・政権評価特別委員会委員長の飯泉嘉門徳島県知事は、「三位一体改革によって財政面で格差が広がっている。国と地方の協議の場で、地方側からもっと提案していく。分科会を設けるべきだ」と話した。
このほか、「地方分権が本当にうまくいったのか知事会の側からも総括すべきだ」「地方分権に対する国民の満足度が低い理由を考えるべきだ。首長のチェック役である地方議会の在り方、職員の能力の向上策についても議論する必要がある」「自治体の執行力は極めて弱い。強権発動がやれない。今後の時代もこのままでいいのか」「地方分権改革がハードの制度論、役割分担だと行き詰ってしまう。自治体、住民などそれぞれのガバナンス機能を考えていく。これからの自治は、いろいろなネットワーク、パートナーシップを可能にする柔軟な機能がいる」などの意見が、有識者からは出された。
▼主な資料
・研究会資料
http://www.nga.gr.jp/data/activity/committee_pt/committee/bunken/h28/161102.html